THE BEAUTIFUL WORLDを某フォロワーさんに勧められてプレイしたのですが、とても面白かったので感想を書きたいです。
THE BEAUTIFUL WORLDはTECH GIAN 2011年10月号~12月号に収録された、(駿河屋のリンクはこちら・こちら・こちら)
「しすたぁエンジェル」・「らくえん」の連悠太さんの監督作品です。
しかし、そのコメディ要素が強かった二作品とはガラッと毛色が変わり、ほぼシリアスな内容となっていますが、
個人的にはやるせなさ・どうしようもなさだったり、テキストの軽薄さ等の根っこの部分は同じ部分もあると思いました。
そして、THE BEAUTIFUL WORLDは、この3か月分で第一部が終わりますが、続きは出ていません。
一応作品に出てくる連続殺人鬼事件自体にケリはつけられますが、伏線やそもそもほぼ出てこなかったキャラもおり、ほぼ投げっぱなしです。
ですが、それを持ってしても有り余る魅力があります。本当に続編でないかな・・・・
後は褒めるだけなんで最初に一つ不満というか面倒くさかったことを一つ。
この作品はフラグメントという形で、その時起きていたことを別のキャラの視点で見れる機能がありますが、
それがいちいちタイトル画面に戻ってビューワー開いて確認しなければならないというのが少し面倒くさかったです。
本編中に右クリックで出来るメニュー画面から簡単に飛べるようにしても良かったのでは。
一応サスペンスモノなので重大なネタバレは避けて紹介したいと思います。
誰もかれも内面を隠し生きている現代社会もといこのTHE BEAUTIFUL WORLDという作品。
主人公の鳴神玲は飄々としつつも内面では劣等感と鬱屈を抱え、他人と距離を置き、見下し軽蔑して生きています。
誰も自分を分かってほしいけど分かってはくれないだろうしという矛盾。
まず、この作品の主要人物たちは、みんなそれぞれ家庭環境がねじれています。
鳴神玲は父親に性的虐待を受けており、母親も父親に殺されています。
ヒロインである如月陽々子は施設で過去実験を受けており、結局実験結果がうまくいかずに捨てられています。
従妹の薪叢来未は父親が忙しく、子どもながら大人になってしまっています。
そして小鳥遊鴇乃は過去父親から暴力をふるわれ、現在も母親と向かい合うことが出来ずにいます。
作中でもそこで生まれてしまった歪みが影響しています。
この作品のテーマはなんでしょうか。私は「人間」だと思っています。
作中には、何度も「人間的」という言葉が使われています。
欲望塗れで醜悪で下品でみっともなくて痛々しいそれが人間。
その「人間」によって犠牲になってきた鳴神玲と如月陽々子は、
人間と交わることが出来ずに同じ僅かなうらやましさと疎外感と諦めを抱えて世の中を俯瞰して生きています。
ですが、その「魂の双子」と呼び合うことになる2人が出会うことによって、
それぞれがそれぞれと関わっている中だけでは生きている実感を得る事が出来ています。
誰かが誰かの代用品でしかなく、来未にとっては父親の隆司の代わりの玲。陽南子の代用品でしかなかった陽々子。
櫻坂総にとっても敷島らいんはその姉の代わりでありますし、鴇乃も実兄の告春が手に入らないから玲にモーションをかける。
身近な誰かに届かない人の役割を期待しているキャラばかりの中で、鳴神玲と如月陽々子のお互いがそれぞれの魂の双子である真っ直ぐ向かい合った関係性は尊くもあり、それ故歪んでいます。
2人だけで完結してしまった世界。そこには誰も入ることが出来ません。柚憂もそりゃフェードアウトするわな・・・・・
ですが、私は良いと思いました。うすら寒い世界の中でようやく見つけた自身の半身、それは温かさがあると感じます。
人が真に信じ合い理解し合うことは出来ませんが、大切なのはこの人なら「信じられる」と思うことだと思っています。
その先には破滅しか待っていなくても、この二人に幸あれ・・・・って感じです。
テキストも読みやすくサスペンス推理モノとしても王道で分かりやすいとはいえ、初見では巧妙な伏線とミスリードがあり楽しめます。
SF要素も少し出てきますが、おまけみたいな感じで、これからの部分で出てくる予定だったのでしょう。
作品が続いていれば第1部の連続殺人のザ・ペーパーバッグの次は彫刻家ということで美術教師がメインだったんでしょうか。
好きなシーン紹介
陽々子が首なし死体が隣にある殺人現場のベッドに横になるシーン。
尊くて美しい・・・・(合掌)
玲が鴇乃にフェラしてもらうシーンで全然勃たなくて相手女性に尻穴触られて勃起して、行為後に主人公が泣くところ
性的虐待受けていたということでアナル開発されており、普通の行為では勃起しなくなってるところが、主人公のこれまで受けていた虐待を想起させて・・・・悲しくもエロいッ。