SIGHtseeing

ゲームブログです。

つくとり 感想

最近つくとりというエロゲをクリアしました。元はと言えば伝奇モノがやりたいという事でフォロワーからおすすめしていただいた作品でしたがとても楽しむことが出来ました。

プレイ時間は15時間ほど、一部除いてテキストのテンポが良くスイスイと読み進められました。

ゲーム紹介サイト(げっちゅ)はこちら

OP

名曲です。

あらすじ(げっちゅより)

古い因習と伝統に縛られた人口1000人あまりのひなびた町、月鳥町では、毎年祭りの季節が近づくと必ず「ツクトリ様のいけにえ」とされる木に吊るされた死体が発見されるという。ひょんなことから事件の捜査を手伝うことになった主人公橋上郁は、奇怪な事件を通して複雑な事情を抱えるヒロインたちと出会っていく。ツクトリ様は実在するのか? そして月鳥町に隠された真実とは?

ゲームの良かった点

・伝奇ミステリホラーモノ・閉鎖的な田舎の雰囲気が良く出ていた。

次々と事件が起こっていく中でおどろおどろしい雰囲気が良く出ていました。作中の伝奇設定がよく作りこんであり、ひぐらしのなく頃にや最近だとレイジングループなど伝奇モノの名作をプレイしてきましたが、負けず劣らずの出来であったと思います。「ツクトリ様」という風習を、何も知らないよそ者の主人公である橋上郁を通してプレイヤーに体験させ、二転三転する何が本当で何が嘘か。誰が味方で誰が敵か分からなくさせるシナリオはとても面白かったです。

そして、ゲーム性は皆無な直線型シナリオであり、その構成を使いミステリモノとしても情報を小出しにしつつ新たな謎も徐々に増えていく出し方は上手かったと思います。

・登場人物の内面描写が細かく、感情移入しやすかった。

つくとりでは主人公以外の視点になることも多く、よそ者である主人公には語られない、内部からの出来事を通しての閉鎖社会での閉じた価値観や信念の違いによって生み出される悲劇が、月鳥町の背景と共に描かれており登場人物達に感情移入しやすく、「お前の気持ちめっちゃ分かる」と何回も思わされました。

特に良かったのがルートヒロイン(?)であるところの綺子・弥生・グリューンでとても魅力的でした。

あんまりヒロイン全員を好きになることはないのですが、この作品ではどのキャラにも思い入れが出来ました。

主人公の橋上郁はメチャクチャ無礼な人物で「お前何考えてんだ」と思う場面も多々あり、好き嫌いが分かれると思います。

自分はいつもはそういったキャラは苦手なのですが、今作にはきちんと「何で主人公は目上の人に対する態度や対応の仕方がダメなのか」という理由を用意してあり、この事が主人公の背景と密接に関わっており、私は主人公にも思い入れが出来ました。

・超常オカルト要素が無かったこと

伝奇モノの作品ではよく終盤に、本格ミステリ路線だと思っていたら、いきなりご都合主義な超常現象やオカルト要素が出てきて醒めることがありますが(そういった作品でも面白いモノはきちんとあります)、今作は多少強引なところはありますがきちんと最後まで、「人」とトリックをで貫き通したことは良かったです。

後、登場人物の行動に突拍子無さや矛盾が無く、タイムテーブルで管理できるのも良かったです。

良かったとも悪かったとも言えない点

・個性的な原画

今作の原画担当はブギーポップシリーズやTOPCAT作品で有名な緒方剛志(ぼうのうと)氏であり、ハッキリ言って可愛らしいキャラデザではありません。何だこれと思われる方も多いと思われますが、私個人としてはつくとりの伝奇モノらしい雰囲気によく合っていたと思います。めちゃ可愛いキャラデザではこのつくとりという作品は成り立たなかったと思います。

でも綺子や杳なんかは普通に可愛かったな~と思います。

悪かった点

・ギャグが滅茶苦茶寒かったこと

特に序盤で顕著ですがシリアスなシーンでいきなり雰囲気とテンポを壊すギャグを大量に入れており、しかもそれが全然笑えるモノでは無かったため、最初の方は本当にこのゲームを投げ出そうかと思いました。中盤~後半ではそれが抑えられておりテキストも読みやすく、伝奇モノの雰囲気も十分に出ていました。序盤のクソつまらないギャグ要素を無くせばもっと評価されているのではと思います。

味塩ロケッツさんの他の作品でもその傾向があるみたいで、同ライターのBradyon Vedaではあんまりそうは感じませんでしたがライターの悪癖なのでしょうか。

まぁそれでも、すかぢ先生のギャグシーンよりはマシですけど。(またこの人すかぢの悪口言ってる・・・・)

全体感想

この物語は決して「ファンタジー」ではありません。サンカと呼ばれた山の民達は実際にいましたし、月鳥町南部のような被差別部落も未だにありますし、グリーンフォークのような団体も実際にあります。某国民でないと幹部になれない愛護の会も明らかに某巨大宗教団体がモデルだと思われます。

私はそのどれとも直接的な関りはありませんが、そういった状況に置かれて実際に苦しんでおられる方もおられます。

エロゲでここまで切り込んだ作品は少ないのではないでしょうか。

私もそういった人たちに手を差し伸べろなんて無責任な事は言えませんし、この作品でも切り込んではいても、特に宗教団体のあり方なんかに関してはそこまで突っ込んでいません。

それよりも重要だと思うこの作品のテーマは個人的に「居場所」だと思います。過去に理不尽に家族を奪われ居場所を無くした主人公橋上郁。

昔居場所を求めて月鳥町に移住したツクトリ族たち。家にも居場所がなく居場所を求めた果てにすれ違った森下姉妹。

活動拠点と教祖を失い居場所を求めて月鳥町にやってきたグリーンフォーク関係者。与えられた居場所のために何でもしてきたグリューン。母国の家族にも会えず教団の中で居場所を求めた久十生や甲賀たち愛護の会関係者など、

登場人物全員が自分の居場所を求めたり、守ろうとする中ですれ違い、分かり合えず、そして譲ることも出来ずに

それでも生きようとあがいた結果がこの「つくとり」という物語で、誰も悪くないし、全員悪いとも言えると思います。

けど、だからこそ、その中で最終的に居場所を見つけられた主人公たちは幸福で、この先の幸せを願いたいです。

最後に終盤で明かされるあるキャラに関する叙述トリックは鈍いので普通に騙されてました。

読み返すと分かりやすく提示されてますね。アレめちゃくちゃ驚いた。