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カリギュラ2発売直前のため前作カリギュラオーバードーズ紹介

ツイッター等ではちょくちょく言っているのだが、自分はカリギュラというゲームが大好きである。そして待望の続編である2が明後日24日に発売ということでいてもたってもいられず、わずかでも布教のためにということで前作を紹介したいと思う。

 


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元はフリューより2016年6月23日に発売されたPlayStation Vita用ソフトであり、現在はリメイク版のカリギュラオーバードーズPS4・スイッチ・Steam向けにリリースされています。私は無印Vita版を1周、オーバードーズを3周クリアしている。俺が複数回周回プレイするというのはかなり珍しい事です。この事からも本作を気に入っていることが分かると思う。本作のシナリオライターはペルソナ1や2罪/罰等の里見直氏であり、自分がVita版発売当初興味を持ったのもその影響です。設定資料集や楽曲のアルバム・スピオンオフ小説も買っております。

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ゲームの紹介ということで、キャラクター等のパーソナリティーやネタバレに多少なりとも触れるためまっさらでプレイしたいという方は気を付けてください。

 

 

本作のジャンルはジュブナイルRPGであり、偶像(アイドル)殺し×現代病理ををテーマにしています。ざっくりあらすじの説明をすると、自我に目覚めたμというバーチャドール(いわゆるボーカロイド)が現実に絶望し疲弊した人々を招くために作った望めば何でも叶う仮想世界メビウスに囚われた主人公たちが現実に帰るため、μの居場所を追ってμの楽曲を制作し流行させメビウスの維持を図るオスティナート(執拗反復)の楽士(いわゆるボカロP)と戦うというストーリーになっている。また、メビウスに招かれた人物は例外なく高校生の姿となり、高校三年間を延々と繰り返す(3年生で卒業すると1年生で再度入学してくる)ことになり、そして理想の姿で現れるためメビウスでの姿と現実での姿が大きく乖離していることもある。またメビウスに招かれている時は現実世界ではアストラルシンドロームという抜け殻状態となり、生命維持活動しか出来ない状態に陥り社会活動が出来ない状態である。そのため介助をする人がいなければ餓死してしまう可能性すらある。現在メビウスは一人でも外に帰すとその分μのファンが減り、メビウスの維持に支障が出たり、他にも大勢外に出ようとしたりする人が現れるかもしれない、綻びが出るということで、現実に戻ることができなくなっている。

一目するとなんじゃこりゃと思われる方もおられるかもしれないが、「理想(きみ)を壊して、現実(じごく)へ帰る」というキャッチコピー通り、人間のために理想の世界を作ってくれた偶像(アイドル)を壊して、現実という地獄に帰ることを目指すゲームになっている。

前述した通り舞台のメビウスに招かれるのは現実に絶望し疲弊したキャラクターばかりのため、自ら望んでではなく不意にメビウスに誘われたとはいえ、仲間や敵である楽士も本作のテーマが現代病理であるように、拭い難いトラウマ等により全員精神疾患を抱え心に暗く重い物を抱えている。

例えば仲間のパーティーメンバー(帰宅部)でも、若いシングルマザーで日々のパート暮らしと子育てに疲弊し、学生の頃のような自由を求めて招かれたキャラや、摂食障害でやせ細り現実では入院中のキャラ、友人の死が忘れられず30歳まで職歴一切なしの引きこもりのおっさん、なんとなく流されて生きてきてしたい事が分からず、何者にもなれないと悩んでいるが、承認欲求と自己顕示欲だけは巨大な青年等がいます。このキャラたちはそれぞれの切実な理由で(前述のシングルマザーなら自分の子どもを現実でほっとくわけにはいかない)現実に帰る事を願って行動している。

敵側のメビウスの維持を目的とするオスティナートの楽士達も、現実では巨体のおじさんだが、実は幼い頃から少女趣味があり、「ゆめかわいい」ファッションを着たいと望んでいるが、しかし現実では世間体等のため着る事が許されないというジェンダー上の悩みがあった。メビウスでは理想の美少女の姿で過ごしており、自分の夢が叶うのはメビウスでしかありえないため、現実に帰ろうとする帰宅部を止めようとするキャラがいたり、家族全員を失い現実世界には居場所がないためメビウス固執するキャラがいたり、事故により現実世界では全身不随のため、メビウスではないと自由に動き回ることが出来ないキャラがいたりとメビウスを壊す訳にはいかない切実な動機があり、その信条のぶつかり合いがあります。カリギュラのキャラクターの良いところはテンプレのキャラの設定に沿って動くだけのロボットではなく、人間味があり普通のRPGではまずないパーティーキャラが人の外見で悪口を言ったり、ぐだぐだの喧嘩をしたり、等身大の悩みで苦しんでいたりと生きている感触があることです。また精神疾患・キャラによっては発達障害・パーソナリティ障害を抱えており、個々のキャラクターと触れ合うサブイベントではその内容に触れていくのですが、それを「救う」「治す」という風な方向にもっていかず、そのキャラをそういう特性のある人だと「受け入れる」というシナリオだったのがかなり嬉しかったです。これは本作のプロデューサー/ディレクターの山中拓也氏が大学時代心理学を専攻し、心理士資格を取得しており、ゲームクリエイターを目指す前はカウンセラーを目指していたという経験からくる視点だと思いますが、自分も大学では心理学を専攻して、ゼミでは発達障害とかパーソナリティ障害系を学んでいたので自分にも通じる部分がありました。

また楽士達は一人の楽士ごとに実在のボカロPにそのキャラに沿ったオリジナル曲を提供していただいています。OSTER projectピノキオピー、cosMo@暴走P、DECO*27など誰でも知ってる有名どころを引っ張ってきており、楽曲のクオリティの高さは折り紙付きですし、世界観や楽士一人一人のパーソナリティを掘り下げるのにとても良いです。そのため正直帰宅部より楽士側に強い感情移入を覚えたりします。私もどちらか選べと言われたら楽士側に付くでしょうね。何でも出来て何者にでもなれる理想の世界があったら手放したくないですから。2016年にボーカロイドをテーマとしたゲームを作るのは時代遅れだと言われたそうですが、ボーカロイドが自分の代わりに歌ってくれる機械としてではなく、文化として定着した今だからこその物語であると製作陣は語っています。楽士とμの関係性も、現実のボカロPとボーカロイドの関係性を軸にしていますし、それを聴いてメビウスに囚われるキャラクター達も、ボカロ曲を聴いて救われているボカロファンと重なる構造になっています。そういった現実とゲームを繋ぐ入れ子構造に耐えうる強度のあるゲームだと思います。

 

次よりさらに内容に踏み込みますので注意してください

 

 

 

 

Vita版ではストーリーは分岐なしの一本道でしたが、リメイク版では主人公の性別選択や帰宅部を裏切る楽士ルートへの分岐やマルチエンディングが実装され、帰宅部2人・楽士2人の新キャラ4人が追加されました。この4人は現実世界のある事件によって繋がっています。個人的に私は帰宅部で追加された2人は増えたシステムによって生み出されたキャラかなと思ってしまいます。1人は男性恐怖症で主人公が男性か女性かで話すコメントがガラッと変わってきますし、1人はパーティーメンバーにあるまじきマジの極悪人で、本性を隠して当初帰宅部に入部しますが、そのキャラを帰宅部から追放するかどうかで展開やエンディングが変わってきます。これはプレイヤーが周回プレイが飽きないようにとの配慮だと思いますが、追加キャラクターが追加シナリオやシステムに縛られてしまっているため、キャラクターのテンプレっぽさが薄いのが特色の一つであったカリギュラにいかにもテンプレっぽいキャラが出てきてしまったなと思いました。まぁどのキャラもとても良いのですが。

そしてリメイク版で改善されたものばかりという訳ではなく、戦闘面はVita版は仲間たちの攻撃の順番を考えたりといった戦略を練る楽しさがあったのですが、オーバードーズはかなり戦闘が大味で難易度がノーマル程度ならスキルの基本技を連打しておけばなんとかなるという仕様ですし、元々あったクリア後の裏ダンジョンが削除されています。グラフィックも正直今どきのゲームとは思えないほど荒かったり(これは数百人いてしかも交流もできるモブ生徒がいるからだとも思うが)、モーションがかなりモッサリしていて、お世辞にもシステム面がとても良いとは言えません。しかし中古でも今調べたらPS4版は1000円程度で買えるし、販売はフリューだしでクソゲーか?と思われる方がいらっしゃると思いますがそんなことはありません。フリューだから期待できないという意見はかなり時代遅れの発言で、カリギュラ・アライアンスアライブ・クライスタ等特に近頃は面白く尖った作品を連発していますし、最近もモナークを制作発表するなど新規IPを次々発表する姿勢は本当に尊敬しかありません。そもそも特にカリギュラはテレビアニメ化もしていますし、この記事を書くきっかけになった続編も発売されるほど人気です。システム面が今一つであっても、シナリオ・キャラクター・音楽・テーマ性は唯一無二に輝いており、私はプレイして救われました。一周25~30時間でRPGとしてはサクッとプレイ出来るので興味がある方はぜひどうぞです。2では明らかに1で出てきたキャラと関係があると思われるキャラクターもいるため、2から入るよりは1から入るのが個人的におすすめです。また今回の紹介で紹介しきれなかったところが当然ありますし、言葉足らずなところもあると思いますので、ぜひ実際にプレイしてみてほしいです。