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藤本タツキ先生新作読切「ルックバック」について

 

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 以前藤本タツキ先生のキャリアについてまとめたものです。

 

皆!ルックバック読んだか!?!?読んでない人はこのブログはさっさと閉じて上記のリンクから一刻も早く読んで欲しい。

 

本日の0:00にそういえば藤本タツキ先生の新作読切発表されるんだっけと軽い気持ちで読み始めたら、とんでもないものと激突してしまい当初の寝る時間が大幅にずれ込んでしまった。ここまで圧倒的な完成度と完全さを見せられると泣けてくる。というか143ページの読切って何なんだよ‥‥。それもう書き下ろしの単行本1冊分くらいじゃん‥‥。

藤本タツキのファンであるという主観的に見ても、ファン目線から離れて客観的な視点で見ても、藤本タツキのキャリアの中では断トツで1番面白く、それだけではなくこの世の全漫画の中でもトップクラスに位置するであろうと思う。これからの人生で好きな漫画はと聞かれたら名刺代わりに差し出す1つになるであろうし、今作を入れた今までの藤本タツキの読切を集めた短編集を出版したら、それは漫画のマスターピースの一つだし、手元に置いて一生読んでいたいと思う。

藤本タツキ先生がすごく漫画が上手いと思う理由は表情の描き分けと、藤本タツキらしい映画的な演出と漫画でしかできない表現の対比や同じ構図を使った回想と現在のリフレインが効果的に使われているし、漫画内で語る部分と語らない部分の取捨選択や感情表現等が上手く使われており、藤本タツキ自身が自身のキャリアを本筋に漫画に救われた事と、自身が漫画を描く意味、これからも漫画を描いていく事を143ページで起承転結つけて描いていた。ここまで自己分析と自己解体をされているのはただただ唖然とするし、1ページ目から143ページ目の端から端まで張り巡らされたヒリヒリとした緊張感があった。そしてチェンソーマンは11巻で第1部が終わったが、作中作のシャークキックはこれから12巻が出るということで、藤本タツキ先生の俺はこれからも漫画を描き続けていくという覚悟と矜持も見えた。

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド的夢想を下敷きにしつつきちんと最後には現実に着地している事も素晴らしいし、様々な作品を引用しているが完全に自分の味としているし、ルックバックというタイトルもLookBack「回想する」、藤野と京本が互いの背中を追い続けてたLook Back「背中を見る」、京本の最後の四コマ「背中を見て」、今までの作品にも登場してきた背景美術を見てほしい。


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そしてOasisのDon't Look Back In Angerの引用の振り返るなという意味などタイトルが多重の構造を持っている。マンチェスターでのテロ事件のアンセムになった同曲と同じように、この藤本タツキのルックバックは普遍的な意味を持った作品であるが、本作の下敷きの一つである「 京都アニメーション放火殺人事件 」から丸二年+1日目に公開されたという意味を鑑みるに本日中にぜひ読んで欲しいと思う。藤本タツキ先生なりの過去の後悔と現実と創作物への愛と創作物の持つ前向きさや未来やエネルギーについて‥‥

そして皆さんも言っているが、作中の制作物を実際に作中で描くというのは、作者が自分は漫画が上手いと自覚していないと出来ない。よくあるでしょう、作中で完全とされるものが、作者にそれを描き切る技量が無くてワザとぼかされていたり、語られていない物を実際に形にしてみたら、とたんに陳腐な物になってしまったということが。実際に藤野の四コマは出来が良かったし、京本は背景が素晴らしかった。その上手さの描き分けも素晴らしかった。

とここまで語ったが、この作品は語れば語るだけ無粋になって輝きが損なわれるような気がするので、個々人で本作に激突して噛み砕いて飲み込んで人生の糧になったらいいなと思いました。