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ふゆから、くるる。クリア感想

シルキーズプラスより2021年9月24日に発売された渡辺僚一さんの新作「ふゆから、くるる。」をクリアしたので感想を書きたいと思う。とても良かった。

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シリーズ前作あきゆめくくるの感想はこちら

sigh-xyz.hatenablog.com

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私はアダルトゲームのシナリオライターとして渡辺僚一さんが非常に好きで、氏の書かれた作品は好みであることが多く半端マニア時代からほぼ全てプレイしている。

今作は氏の代表的なSF四季シリーズ最終作という事で無事発売出来た事がまずめでたい。前3作の発売元であるすみっこソフトは秋を出してドカンと逝ったので。

氏の作品の特徴として「殺人・欲望・性欲・世界と自分・肉体と精神、それとリノリウムの床」という事が挙げられるがこれは実質的処女作である冬は幻の鏡から続いているものであり、氏の作品にこれらの価値観は通底している。

本作も学園に殺人鬼が許容されていたり、序盤ではるくるを思わせる怒涛のエロシーンの数々。本作はほぼ一本道であったり男性が出てこない以上女性が男性器を生やしたふたなりが出てくる訳で、その上事前情報がないため拒絶するような人もいる事はいると思います。実際賛否両論の声はありますが、私はとても良かったと思います。

本作のテーマについて考えてみると、簡単に言うと「種と個、生と死、未来」、エロゲ的に言うと性行為の果てででしょうか。

渡辺僚一氏は精神と肉体の相関関係、精神は肉体に引きずられるという価値観でシナリオを書かれる事が多いですが、本作も男になった夕陽が"男"に引きずられたり、周りのキャラが惹かれたりという事が描かれた。それは一見するとギャグみたいな設定であるが、登場人物達はいたって真剣であり、綿密で適切な心理描写を得意とする氏の持ち味が活きていた。

渡辺僚一氏の描くキャラは自分の都合・弱さ・エゴとかを隠さずぶつけるので、真っ当というか感情に対して嘘が無いというか、生っぽく生きてるなぁと感じます。そしてエロシーンにきちんと意味があるという所も良い。前述した男性の暴力性を描くという事や、種を残すという切実さがある。

氏の特にSF四季シリーズはテーマ・メッセージ性ありきというか、そのためにゲームの舞台設定や理論というガワを組み立てて、モチーフを用いて伝える。ミステリパートがフェアではない・序盤だらだらとしたエロシーンが多すぎる等と批判される事がありますが、正直それ自体が重要なのではなくそれを装置として物語を紡ぐという構成を取っているのであまり気にはなりませんでした(いつものだなという感じで)

シナリオライターの裏側までにまで手を伸ばして、作品を解体するのは行儀が悪いと思うのですが、渡辺僚一氏が父親になり(知り合いの○歳女児シリーズ好き)、子育てをする上で感じたであろう子どもへ未来を残すという気持ちが本作の発端になっているのではないかと思う。明らかに以前と比べ個より全体という種に目を向けた話になっており、作品の至るところから、自分達が消えてなくなっても"未来"に対する幸福であってほしいという祈りが伝わってきます。

本編では一緒に意識を産むことが出来なかった夕陽としほんが、朝日とれぷとという形で出会うという立ち絵省略のための演出だろうと思いますが、徐々に世代交代をしていく過程で立ち絵が同じキャラが現れるという事が嬉しい演出でした。その際の「祈りのチェス」のシーンは本当に素晴らしい。

中世日本で行われていた信仰のため補陀落浄土を目指していた補陀落渡海、種の保存のため針を宇宙に向けて放つ事、そして性行為を行い子供を作る事これらが、「祈り」という線で繋がるという作品でした。

モチーフやテーマは直接的ながら抽象的な作品のため、感想も抽象的になってしまいましたが本当に良かった。渡辺僚一ファンならマストです。