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システム面はシリーズ最高峰だが、シナリオは進展が薄くⅢへの繋ぎにすぎない『英雄伝説 黎の軌跡Ⅱ -CRIMSON SiN-』ネタバレなしレビュー


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9月29日に日本ファルコムより発売された『英雄伝説 黎の軌跡Ⅱ -CRIMSON SiN-』をクリアした。サブクエスト全クリア・場面転換ごとに更新される街中のモブキャラクターに毎回話しかけるという、いつものプレイ方法で56時間ほどでクリアできた。普段の軌跡シリーズは80時間以上のプレイはザラであったため本作はコンパクトという印象が強かった。シナリオ面も前作から本作に引き継がれ、明かされた新たな謎というのは、カトルの正体・3代目《C》の正体程度であり、ストーリーの内容も今までのシリーズのやり残しや、既に終わった事柄を更に掘り下げるという「黎の軌跡2」というよりは「黎の軌跡1.5」のような印象で、前作の補完のような形式だった。そのためシリーズ全体の進行としては何一つ進んでおらず、このような形ではなく、もっとシリーズの謎に切り込みシナリオを練り込めば今回で「黎の軌跡」を完結させることは可能であったと考える。

 

ただ軌跡シリーズの醍醐味は確かに劇的なストーリー展開であるが、街並みの移り変わりや、細かく描写されるキャラクター同士の交流や成長といった「余白」部分にも強い魅力があると考えている。今回のような完全にⅢへの繋ぎのゲームという体験は良くも悪くも軌跡シリーズでしか味わえないだろう。単純接触効果もあるだろうが、通常のゲームであったら切り捨てられるであろう細かい部分も描くというキャラの掘り下げをして愛着を持たせる。シナリオ以外にもサブクエスト・街中のモブキャラクターの言動から世界の輪郭を描いていくという構成は良い。ただ綿密に物語がシリーズを通して繋がっているため、前作『英雄伝説 黎の軌跡』をプレイせずに、本作からプレイするのは一切おすすめできないので注意願いたい。

 

タイムリープ要素が上手に調理されていないシナリオ

前作は1章ごとにキャラクターの見せ場、ストーリーの山場が用意されていた。本作は軌跡シリーズの続編ということで仕方ない部分もあるが、過去作のキャラクターが多く登場し、新たな舞台・新たな出会いという側面が薄い。また序盤はパートが分かれ、登場キャラクターも絞られるため今まであまり触れてこなかったキャラクターを使用するという点では良いが、いまいち盛り上がりに欠け薄味という印象が拭えない。ただ要所の締めるべき場面ではカタルシスが感じられ熱い物語が展開されるので、全体的なシナリオのクオリティという面では前作に及ばないものの中々楽しめた。

また本作で新たに登場するタイムリープ要素が個人的に問題だと考える。今回はADVゲームのようにデッドエンドが用意されており、初回は必ずそこに到達し、時間を巻き戻して別の方法を探してやり直すという構成だ。だがこの巻き戻せるという仕様がキャラクター描写と食い合わせが悪い。ゲーム全体が何度もやり直すという前提で進むため、例えばシリーズ屈指の強キャラが協力しているにも関わらず、なぜかその時だけ「油断した・・・・」などと言って死んでしまったり、非常に注意深い人物が仕掛けられた罠に気づかなかったりする。主人公たちも徐々にやり直しができるからと、前作よりも行き当たりばったりな言動を繰り返すようになるので、キャラクター描写の一貫性という面では悪手であったと感じた。そのためシナリオを通しての緊張感が薄く、プレイヤーも徐々にどうせ巻き戻って蘇るからと、展開も読めて冷めてしまいマンネリ化し、ゲーム全体のかさ増しのような印象を受けた。前作でやり直しせずに撃破してきた敵キャラクターの格も下がってしまうため、例えば初回でも探索を十分に行っていれば(断章のネメス島はそうだったが)やり直しをせずに突破できるなどの要素があればよかったのではないか。

 

シリーズ最高峰の練られたシステム

まずバトルは前作同様フィールド上でアクションゲームのように戦うか、従来のようにSRPG風のコマンドバトルで戦う方法の2種類が用意されている。どちらもシームレスに移行できるが前作ではアクション部分がオマケという印象で、フィールドバトルは敵をスタンさせてからコマンドバトルに移行すると、相手にダメージを与えつつ先制が出来るのでそこまでの繋ぎという印象だった。

本作はフィールドバトルでは、敵の攻撃をジャスト回避することで味方にバトンタッチして追撃できる「クロスチャージ」、フィールド上で魔法を使用できる「クイックアーツ」システムが追加され、アクション面でできることが増え爽快にバトルを行えた。コマンドバトルでも「EXチェイン」というスタンした敵を味方とともに追撃するシステムが導入され非常に使い勝手がよいため、戦闘では積極的にスタンを狙っていくという戦略性が生まれている。また前作では必殺技の「Sクラフト」がブーストゲージを消費して発動する「Sブースト」さえしていれば何回でも使用可能だったのに対し、今回は1回のSブーストにつき1回しかSクラフトを使えなくなったため、いつ必殺技を使うかというかけひきが面白い。戦闘面は現代のJRPGと比較しても非常に高水準で誰でも楽しめるものとなっている。

 

また、戦闘面以外にも裏解決屋(探偵)らしい対象に見つからないように後をつける尾行モード、さらにハッキングや釣り・バスケやカードゲームなどといったミニゲーム要素が多く追加されている。例えば尾行は「ジャッジアイズ」シリーズのようだが非常に分かりやすいシステムで、難易度も低いためシリアスな本編の息抜きのアクティビティという側面がある。こうしたプレイヤーがゲームに多く介入できる余地を作っておくことで、さながら自らが軌跡シリーズの舞台であるゼムリア大陸へ降りたっているかのような世界観へのインタラクティブな没入感を促している。

 

ただ、サブイベントの選択肢で上昇するLGCアライメントのロウ・グレイ・カオスの属性要素が前作では終盤の味方になる陣営の違いという点でゲームに活かされていたが、本作はただ単にLGCアライメントを上げてもアイテムの報酬があるだけになっており、ほとんどシナリオ面で意味のない仕様だったのが惜しかった。

新要素の本編ストーリーとは別に平行して楽しめるやりこみ要素のミッションクリア型のフリーダンジョン「お伽の庭城(メルヒェンガルテン)」は、プレイアブルキャラクターで自由にパーティーを組んでバトルを楽しめるが、敵を倒してフィールドを行ったり来たりするというだけになっていたのはもったいない。もっとシナリオに絡ませるか、本編やサブイベントではダンジョン内に思い出や理想の場所を再現するという要素があったので、もっとキャラクター過去を反映したフィールドなどバリエーションがあったらよかったと思う。

 

惜しい点を多く書いたが、「黎の軌跡」のキャラクターと世界観を掘り下げる続編としては理想的だったので、もう少しシナリオの構成が効果的だったらと思う。「黎の軌跡Ⅲ」では今回のシステム面をさらにブラッシュアップし、シナリオにも力を入れた1作を見れることに期待したい。