ゲームライターとしての活動まとめ(随時更新)
現在SIGHまたはYuuki Inoue名義で、フリーランスのゲームライターとして活動しています。ブログにアクセスされた方向けに、私がゲームメディアで執筆した記事(ニュース記事以外)をまとめます。
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以下、今までの執筆記事(下にいくほど新しい)
『BLACK SHEEP TOWN』体験版プレビュー
『Last Time I Saw You』体験版プレビュー
『終のステラ』体験版プレビュー
『ディオフィールド クロニクル』レビュー
『BLACK SHEEP TOWN』レビュー
「軌跡」シリーズ入門ガイド記事
『彼方へ Far Away』体験版プレビュー
『モノクロームメビウス 刻ノ代贖』体験版プレビュー
『鳥類弁護士の事件簿』レビュー
『十三月のふたり姫』レビュー
2022年個人GOTY
『キラキラミラ 8人の遺伝子異常者と血の幽霊』紹介記事
『オクトパストラベラーII』レビュー
『パラノマサイト FILE23 本所七不思議』ネタバレコラム
『コーヒートーク エピソード2: ハイビスカス&バタフライ』レビュー
Switchで遊べる名作乙女ゲーム3選
『ゴースト トリック』リマスター開発者インタビュー
『ゴースト トリック』リマスター先行プレイプレビュー
『シカトリス』レビュー
『LOOP8』レビュー
『超探偵事件簿 レインコード』レビュー
『Pokémon Sleep』先行体験会レポート
シュウ浩嵩氏インタビューページwww.famitsu.com
シュウ浩嵩氏インタビューページの誌面構成・ライティングを担当しました。
『Fate/Samurai Remnant』序盤先行プレビュー
『ハーレムオブトーキョー』先行プレイレポート
『Fate/Samurai Remnant』発売記念「Fate」シリーズ紹介記事
『ハツリバーブ-HAZEREVERB-』先行プレイレポート
『リバース:1999』先行プレイレポート
『ガールズクリエイション -少女藝術綺譚-』先行プレイレポート
『スイートホームメイド』先行プレイレポート
『AFK:ジャーニー』先行プレイレポート
『Atlas Fallen』先行プレイ記事
『恋と深空』先行プレイレポート
インサイド2023年末特集:『FF14』暁の血盟ベストシーン振り返り
Game*Spark2023年末特集:「ADVゲーム5選」記事
「ファイナルファンタジーXIV ファンフェスティバル 2024 in 東京」取材記事
『ヒラヒラヒヒル』コラム
『FF14 黄金のレガシー』ピクトマンサー想像記事
『崩壊:スターレイル』Ver.2.0先行プレイ記事
『ファイナルファンタジーVII リバース』先行プレイ記事
『ファイナルファンタジーVII リバース』プロデューサー北瀬佳範氏・ディレクター浜口直樹氏インタビュー記事
『ファイナルファンタジーVII リバース』クリエイティブディレクター野村哲也氏インタビュー記事
『ファイナルファンタジーVII リバース』先行プレイ動画(映像撮影・テキスト作成)
『ペルソナ3 リロード』クリアレビュー
『Devil May Cry: Peak of Combat』βテスト先行プレイレポート
『聖剣伝説 VISIONS of MANA』プロデューサー小山田将氏インタビュー記事
『聖剣伝説 VISIONS of MANA』先行プレイ記事
『聖剣伝説 VISIONS of MANA』先行プレイ動画(映像撮影・テキスト作成・動画編集)
『アウタープレーン』先行プレイレポート
『ドラゴンズドグマ 2』クリアレビュー
『最恐 -青鬼-』先行プレイレポート
シナリオライター瀬戸口廉也氏インタビュー
インサイド2024年ゴールデンウィーク特集:『崩壊:スターレイル』考察記事
『コール オブ ドラゴンズ』紹介記事
『崩壊:スターレイル』紹介記事
『鳴潮』先行プレイレポート
月刊PASH!『崩壊:スターレイル』特集2024年7月号:ロビン役・名塚佳織様インタビュー担当
【本日発売PASH!7月号内容紹介】『崩壊:スターレイル』!ピノコニーの物語を総まとめ! ブートヒル&サンデーの制作秘話や、大塚剛央さん、名塚佳織さん、河西健吾さん、楠木ともりさん、小西克幸さんのインタビューなど必見の内容です! #スターレイル 7月号の詳細は→https://t.co/4c3ZUzTGME pic.twitter.com/jVH6K2zUz3
— PASH!編集部 (@magazine_pash) 2024年6月10日
『キン肉マン 極・タッグ乱舞』先行プレイレポート
『エルデンリング』ゲーミングPC検証記事
『鳴潮』バージョン1.1先行プレイレポート
龍が如くスタジオインタビュー
『ティンクルスターナイツ』リリース1周年記念タイアップ記事
小高和剛氏インタビュー
『レナティス』ショート動画(映像撮影・台本作成・動画編集)
『妖之郷』ショート動画(映像撮影・台本作成・動画編集)
『ムゲン・フォレスト~妖精の牧場~』先行プレイレポート
『FF14 黄金のレガシー』感想記事
『リルヤとナツカの純白な嘘』レビュー
『Fate/stay night REMASTERED』発売記念紹介記事
SNS監視ツールOreo×PLAYISMインタビュー
「FGO Expo ~Fate/Grand Order Fes.2024 9th Anniversary~」取材記事
min.tでもツイートでの活動内容をまとめていますので、そちらもご覧ください。
「『ghostpia』を制作者と一緒に語りつくす夜」 超水道ミタヒツヒト氏インタビュー
『ghostpia』を制作者と一緒に語りつくす夜
超水道ミタヒツヒト氏インタビュー

サムネイル制作:canavis(アンビエント音楽家)
参加メンバー(順不同敬称略)
SIGH(ゲームライター)
みお(ゲームライター)
カワチ(ゲームライター)
庵野ハルカ(兼業ブロガー)
スーさん(ゲームクリエイター)
2023年7月22日にゲームライター・カワチ氏のYouTubeチャンネルにて、『ghostpia シーズンワン』の内容を、制作者の超水道ミタヒツヒト氏とともに語り合う番組「『ghostpia』を制作者と一緒に語りつくす夜」が配信された。そこでは初出しとなる開発の裏話や演出意図、ミタヒツヒト氏の原点となるカートゥーンに対する愛などが語られている。
このブログ記事は非常に貴重な話をお聞きして、動画としてだけではなくテキストとしても残すべきだと感じた結果、参加者の1人として配信を文字起こししたものだ。テキスト化する上で放送の雰囲気や会話の流れを反映し、あえて話し言葉のままにしている箇所も存在する。読みやすいように発言を削り再構成した部分も多いが、ミタヒツヒト氏をはじめとした超水道メンバー様や、参加者にテキストの監修を受けたものであることをご留意願いたい。そして目と耳で受け取る情報の印象は異なるため、こちらのテキスト版だけではなく、配信動画版もぜひチェックしてほしい。
カワチ
今回はいつもの感想会と見せかけて特別編で、題して「『ghostpia』を制作者と一緒に語りつくす夜」です。今回は元々2014年にアプリで発売され、今年Switchでリメイク版が発売された『ghostpia シーズンワン』という作品がありまして、自分のサーバーにファンが多いため製作者のミタヒツヒトさんお呼びしつつ、質問していければと思っています。よろしくお願いいたします。まずは参加者の自己紹介から始めたいと思います。
カワチ
ライターのカワチと申します。『ghostpia』はゲームメディアのGamerさんでミタさんにインタビューをさせていただき、縁ができた関係で今回いろいろと聞いてみたいと思い、個人配信の方にお呼びしてお話ししようかなと思った次第です。超水道さんはアプリ時代からプレイしているファンで、『ボツネタ通りのキミとボク』という作品が過去にあり、いろいろな作品で没になったキャラクターが集まる街を舞台にしたストーリーが独創的で、こんな作品を作るところがあるんだと思ってプレイをして、 それからずっとファンで追いかけています。
SIGH
ゲームライターのSIGHと申します。よろしくお願いいたします。主にノベルゲームやアドベンチャーゲームなどを中心にプレイして、レビューなどをさせていただいております。超水道さんの作品は自分のスマホがandroidなので、ノベルスフィアというWEBサイトで過去作をプレイしました。『ghostpia』もそのサイトにあったのですが、存在を知ったときにはすでに移植作業に入られているということで、今回のSwitch版を待っていました。
スーさん
スーさんと申します。カワチくんとは専門学校時代からの友達で、長い付き合いでやっています。コミュニティで話題になっていた『ghostpia』を自分も遊ばせていただき、すごくよかったです。今回はミタさんもいらっしゃるということで、いろいろとお話も聞けたらなと思って楽しみにしております。仕事はゲームの開発をしております。よろしくお願いします。
みお
ゲームライターのみおです。『ghostpia』のことは恥ずかしながらSwitch版の発売頃に知り、プレイしたのはもう少し後なんですが、それを後悔するぐらいにはいい作品でした。よろしくお願いします。
庵野ハルカ
庵野ハルカです。こちらの配信では割と出させていただいてますが、普段は「game game」というゲーム好きのコミュニティで配信をしています。『ghostpia』はモバイルアプリ版の最後あたりの更新時に知りました。そのため超水道さんの過去作をあまりやれてないのですが、これからやっていきたいなという気持ちでいっぱいです。よろしくお願いします。
カワチ
では、ミタさんよろしくお願いいたします。
ミタヒツヒト
放送に呼んでいただき、ありがとうございます。超水道というチームで『ghostpia』を制作させていただきました。ミタヒツヒトと申します。よろしくお願いします。

カワチ
『ghostpia』の作品紹介から入ります。『ghostpia』は幽霊と呼ばれる人たちが住むずっと夜で、雪が降っている街を舞台にした作品です。 その街の異邦人である小夜子というキャラクターが主人公で、その小夜子が不思議なヨルという女の子に出会うというストーリーです。小夜子はこの街を出て故郷に帰りたいと思っています。街には謎のロケットが落ちているなどのいろいろな秘密があり、これはなんなんだろうといった感じの謎もたくさんあります。
カワチ
自分が本作をプレイして驚いたのは、やはり演出がすごいことです。文章というよりはアメコミを読んでいる感じで楽しめる作品です。ノベルゲームは簡単に作れるからという理由で制作される方もいらっしゃると思うんですが、ここまで演出に労力をかけてくれたのが、それだけでうれしいというか評価したい部分です。
庵野ハルカ
絵的なアイデアが豊富なのが印象的でしたね。スプリットスクリーンや水玉コラなどが出てくるんですよ。
カワチ
あとバイオレンスな要素もありますよね。
みお
やわらかくてかわいらしいイラストやミタさん独特の語り口で、一見優しい印象のゲームに見えるんですが、そのなかで強烈な暴力が出てくるのが、本作の特異性を際立ててるんじゃないかなと思います。最初のクラーラをぶん殴るシーンで、このゲームにときめきました。
スーさん
『ghostpia』は最初雰囲気ゲーかなと思っていましたが、実際にプレイするとギャップがあり、テキストに味があって引きつけられました。絵と演出との絡み合いも相まってですが、アドベンチャーゲームは書き手のセンスが如実に出ると思うので、 ミタさんの描く世界観を楽しみながらプレイしました。海外のアニメとかであるようなブラックジョークのさじ加減や、テンポ感も含めて楽しかったです。

カワチ
まずは、以前ミタさんにインタビューしたとき、『ダブルキャスト』が一番思い出に残っているゲームというのをお聞きしたので、その部分からお聞きしたいです。
ミタヒツヒト
小学校1年生のときに『ダブルキャスト』が家にあって、ヒロインにスリーサイズを聞く分岐が最初の方にあるんですよね。それで親にスリーサイズってなに?と聞いて気まずくなりました。親にまだ「それを知らなくていい」と言われて、教えたら周りで言うからコイツはと思われてたんでしょうね。そんな思い出があります。
カワチ
ミタさんが影響を受けたのは、『ダブルキャスト』のようなゲーム以外だと、作中での暴力描写みたいなものはアメコミからでしょうか?
ミタヒツヒト
コミックというかアニメですね。コミックの翻訳本は高くて、子供では手が出ないです。ケーブルテレビで「カートゥーンネットワーク」があり、それをずっと見ていました。その頃よく見ていたのは『おくびょうなカーレッジくん』という作品です。この世の果てみたいなアメリカの農場に住んでる老夫婦がいて、 そこにはロズウェルしかり、宇宙とか地底などからさまざまなオカルトがやってきて、老夫婦になぜか襲いかかるんですけど、そのことに唯一気づいている臆病な犬がなんとか退けていくという話です。
ミタヒツヒト
その臆病な犬が「カーレッジくん」という名前で彼のビビり芸を見て笑いつつ、心優しい犬なのでたとえば宇宙からやってきたエイリアンは、実は母星では落ちこぼれで心に深い傷を抱えているので、一緒にその傷に寄り添ってあげます。あとは地球がぐるぐる回った拍子にバナナが支配する未来世界に行って、地球を逆回転して戻ってくる展開もありますね。 なにを言っているかわからないと思うんですけど、そういった自由なアニメがあって『ghostpia』も影響を受けていると思います。
カワチ
『ghostpia』はノベルゲームの文脈とは違う文脈で作られているのかなと感じたので、 海外のアニメと言われたら少し納得ですね。
ミタヒツヒト
親に「お前はオタクにならないように育てる」と言われていたんです。それで日本のアニメや深夜アニメはあまり見せてくれない家でしたが、カートゥーンは対象外だったんです。
スーさん
『サウスパーク』は見ていましたか?バイオレンスというか、ノリがぶっ飛んだコミカルな感じは『サウスパーク』風かもしれないと思いながらプレイしていました。
ミタヒツヒト
子供の頃は見てなくて、大人になってから見ました。ああいったぶっ飛び方は、海外アニメによくある飛び方だと思うので、たとえばケニーが毎回死ぬ展開は『ghostpia』にも繋がっていると思います。
カワチ
それでは質問に入りましょうか。今回は進行を区切りたいと思っていまして、まずは音楽やシステム面を含めた作品全体や世界観に関してお聞きして、その次に具体的なストーリーとキャラクター。そして最後に先ほども少しお話ししていただきましたが、ミタさん自身のことや制作論、次回作についてお聞きしていく流れでやっていこうかなと思います。ちなみに、ここからは完全に『ghostpia シーズンワン』のストーリーのネタバレもありでいこうと思いますので、まだプレイしてない人はクリアしてから聞いてもらえればと思います。
庵野ハルカ
街の広場にミサイルが刺さっているじゃないですか。あれはすごくこの作品を象徴する存在だなと思っていて、ミサイルが刺さったまま不発弾になっている状態で、爆発するのかしないのか『ghostpia』の暴力性を秘めた静けさという側面を象徴する存在だと思います。そして似たモチーフをギレルモ・デル・トロ監督の映画『デビルズ・バックボーン』で見たことがあります。スペイン内戦の頃の孤児院を舞台にしていて、中庭の広場に不発弾が刺さっているんですね。この映画にも幽霊が出てくるので内容的には若干シンクロしていると思ったんですが、この映画はご覧になったことがありますか?

ミタヒツヒト
その作品は見たことはないですけど面白そうですね。どちらかというと『fallout3』のメガトンとプレイヤーの方に言われたことがあります。ただ舞台が雪が降っていて閉鎖的な教会がある街ということで、『ghostpia』の企画の最初期段階に映画版『サイレントヒル』のDVDを、グラフィッカーの山本すずめくんに渡して見てもらった記憶があります。
SIGH
2014年の『ghostpia』初リリースより10年ほど、2018年の第四話からSwitch版で追加された第五話が世に出るまで5年ほど経っていますが、そのなかでシナリオを変更したり、ミタさんが『ghostpia』で描きたいものの変化があったりはしていますか?それともシーズンツーの最後まではじめから構成されているのでしょうか?
ミタヒツヒト
シナリオのプロットは最後まで用意していますが、やはり制作しているなかで、所々の描写などで僕の書き手が変わったなと思うところはありますね。たとえば文章の自力については、これだけ時間がかかっているわけですから、多少なりとも文章のレベルが上がらないと成長のない人になるので、上手くなる分にはいいのではないか思います。それによって細部が変わる部分はあると思いますが、プロットを動かす予定はないです。
カワチ
全体のプロットやオチは、いつ頃から完成していたのでしょうか?
ミタヒツヒト
10年ほど前に企画を出して、超水道でやろうと言ったときからオチは決まっています。ストーリーを書き進めるなかで、ここでこういう要素を書いたからここと繋げていけるよねと、少しずつ内容を太らせることはありますが、オチは近所のジョナサンで明け方ぐらいに超水道メンバーに話したプロットのままになっています。
スーさん
プロットの話が出たので私もよろしいですか。漫画家が作品のなかでキャラクターが1人歩きをして、いい意味で作者を裏切ってキャラクターそれぞれが自由に動きだすと言われる方がいらっしゃると思います。ミタさんは各キャラクターのテキストを書いてるなかで、プロットの流れは変わらないけど、細かい部分で自分の想定と違う動きをしていると感じたキャラクターはおられましたか?
ミタヒツヒト
いわゆるキャラクターが勝手に喋り出すやつですよね。そういうことはあまり僕にはなくて、そうなる人が羨ましいんですよ。想像力や出力がやや乏しいせいなのかもしれないですね。ただ小夜子の地の文はなるべく決められたテキストをただ書いているというよりは、 思考の流れをそのまま反映させることを心がけています。それが「キャラクターが勝手に動きだす」現象に近いのかもしれないですが、 僕はキャラクターをプロット通りに魅力的に書くことで、いっぱいいっぱいかもしれないですね。
スーさん
ミタさんの場合は、設定を含め事前に決めてるプロットに沿って執筆されているのですね。バトルやスポーツを題材にした漫画家が、「キャラクターが勝手に動きだす」とインタビューなどで話すのをよく見かけます。
カワチ
筆が乗ってくるというか。『ghostpia』ではバトルシーンもありますが、その部分はいかがですか?
ミタヒツヒト
バトルは基本的に僕が書いた流れを絵にしてもらうというイメージなので、書きたいように書かせてもらっています。だからグラフィッカーは結構困っていると思います。
スーさん
それではバトルシーンは絵コンテのような形で、こういう感じにしてほしいというイメージもセットで書かれる感じでしょうか?
ミタヒツヒト
そうですね。コンテも必要に応じて、こういう構図にしてほしいと作ることはあります。ただ基本的に超水道は紙文化で、シナリオを紙にすり出したり、PDFにしてiPadの赤ペンで書き込みながら、 ここはこうしたいと山本すずめくんと2人でずっと話し合ったりします。だから顔合わせてひたすらマンツーマンで制作するというイメージですね。
庵野ハルカ
それではシナリオを書きながら絵も同時並行で進むのでしょうか?
ミタヒツヒト
そうですね。本当はシナリオが先にできてた方が、絶対絵を描く人はうれしいと思うんですが、 なかなかそうもいかないことが出てきます。ただ最低限の流れとここはこうしますという指示の部分は書かないといけないので、 そういう意味ではまずはシナリオがないとはじまらないイメージです。
SIGH
舞台の街の定員が1024人というのはコンピュータで使うバイト、2の10乗の数字から取っているのかな思ったのですが、答えられる範囲でよろしいのでなにかありましたらお願いします。
ミタヒツヒト
昔からその点に気づいてくださる方は少数いらっしゃって、本当によく読んでいただいてありがとうございますという気持ちです。ただそれがどういう意味を持っているか、あるいはデタラメなのかはぜひシーズンツーで確かめてみてくれ!
みお
ヨルは街にとっての異物のような存在のため、そのことを「1024」というコンピュータ的に綺麗な数字から1人増えるという表現で表している感じがしますよね。
SIGH
あとキャラクターの指が4本なのは、『アドベンチャータイム』などのカートゥーンアニメに影響を受けてということですが、超水道様の過去作と比べていい意味で異質感が出ております。指が4本ということにカートゥーンへの意識という以外で、物語上の意味を持たせていますか?
ミタヒツヒト
4本指だとみなさん最初から気づきました?

SIGH
クラーラが指を立ててるシーンなどで、明示されていたかなという印象です。
ミタヒツヒト
たしかにあのシーンは指に目線が行くカットですよね。4本指の設定は僕からグラフィッカーにお願いをしました。意識しないとわからないですし「なんで?」と言われたんですが、「海外アニメではそうだからこういうルックにしたいです」と言って、「本当に?」と返されました。
ミタヒツヒト
海外アニメがなぜ4本指になっているのかは諸説あって、実際に描くにあたって4本指だと不自然な形になって、手のバランスを取るのが大変になるらしいです。ただアニメで動いてると結構自然に見えるので、描く指が1本減るので省力化になり、かつ動いてると気にならないというところで、誕生した表現なのではないかと言われています。あとは中指を立てられないようにするという説もありますね。正しいことはわからなかったのですが、止め絵のバランスを取るのが大変になるらしくて、ごめんなさいごめんなさいと言いながら、『ghostpia』の作画をしてもらいました。そして4本指がストーリーに関係あるかはシーズンツーを最後までプレイして、意味があるのかないのかを自分の目で確かめてくれ!
庵野ハルカ
最後までこれで通されるぞ(笑)
スーさん
どうなのかはシーズンツーで描かれると思うのですが、今ひらめいたこととして先ほどの「1024」の数字の件と逆で、指が4本で1本足りないことと合わせて、作中で時間の感覚がないときに「9999年」と言うじゃないですか。それはつまり「1」足りていないということなので、ヨル以外の全員はなにか足りないけど、ヨルは完璧みたいなことじゃないかなと思いました。
庵野ハルカ
ゲームの序盤で小夜子の体が溶けるような表現があったことが印象的で、不死でありながら痛みを感じ、夜のみ行動する本作の幽霊と呼ばれる存在はヴァンパイアのようだと思いました。こうした本作独自の幽霊表現のアイデアはどうやって生まれたのでしょうか?
ミタヒツヒト
たしかにヴァンパイアみたいというのは、おっしゃる通りかもしれないですね。この幽霊のモチーフになったエピソードが実際にありまして、大学生の頃にある商業作品の制作にディレクターとして参加したことがあり、バイトだったのですがなかなかに修羅場の案件でした。多分1年ほど働いて50万ぐらいしか出なかったんじゃないかな。毎日でしたし大学を休学してまで、僕はなにをやっているんだろうと思っていました。
ミタヒツヒト
そのこと自体はもう別にいいのですが、そのときはずっと昼夜逆転生活を送っていたんですよ。会議は夜にありますし冬場だったと思うんですが、冬は日照時間が少ないので起きても起きても基本的に日が沈んでいて、夜中はコンビニしか開いてないから、ご飯買いに行っているときに、夜から出れないなと思ったんですよ。この夜から出れないという言葉が結構素敵だなと思いまして、この修羅場が終わったらイメージを膨らませて作品を作るんだと、その日のうちに山本すずめくんに話をしました。
カワチ
山本すずめさんも同じ仕事をしていたのでしたっけ。
ミタヒツヒト
そうですそうです。だから2人で50万だった説がある(笑)
庵野ハルカ
昼夜逆転していて夜しか知らなかったという生活を送っていたのを聞いて、思い出したことがあって、デヴィッド・リンチ監督が同じことをしていたみたいなんです。デヴィッド・リンチ監督といったら『エレファント・マン』や『ブルーベルベット』などの作品がありますが、監督が一番最初に撮った長編の『イレイザーヘッド』という映画があって、それを撮っている時期は昼夜逆転生活をしてたらしいんです。夜しか知らない生活になっていて、世間で起きてることも全然分からなかったみたいなことを話していて、似た体験をされてるのだなと思いました。
ミタヒツヒト
僕たちはバイトですので、デヴィッド・リンチ監督と比べると少しショボいですけど、そういうことはやはり起こりうるんですね。
みお
夜から出れないという発想が浮かぶのは素敵ですね。自分が昼夜逆転生活をしていても「寝れねぇクソ〜」としか思わないから。
ミタヒツヒト
もちろん99%は「大変なお仕事を引き受けてしました!」と思っていましたけどね(笑)

みお
システム面の質問になるのですが、Switch版をプレイさせていただいて、『ghostpia』はサウンド・テキスト・ビジュアルで一体感がありますが、その一体感をより引き立たせているのが、ジャイロ操作でグラフィックが動いたり、テキストを送るときのHD振動の感覚だったりだと思います。これらの機能のアイデアは、どこから生まれたのでしょうか?
ミタヒツヒト
その点はSwitchでリメイクするにあたり、最初に決めたことですね。『ghostpia シーズンワン』では『アンリアルライフ』という作品を制作されているhako 生活さんに、エンジニアとして入っていただいてます。とても技術力のある方ですがそれだけではなく、プレイヤーがどうしたらいい気分でゲームができるかという部分に、非常に気を遣われる方で素晴らしいノウハウをお持ちなんです。その方がSwitchならこういうこともできますねと最初期の打ち合わせで言ってくださり、どう実装していくかを一緒に考えていただいたという感じです。
ミタヒツヒト
ノベルゲームでは絵の動きのなさが、1つ課題として存在するという気はしていました。そういったノベルゲームの持つさまざまな問題をなんとか解決あるいは緩和したいと思って制作したのが、今回の『ghostpia シーズンワン』なんです。たとえばジャイロ操作で絵がゆらゆらと動くのは「パララックス」と呼んでいるのですが、あれは映画的にカメラが手ぶれしている雰囲気になりますし、プレイヤーの身じろぎがゲーム画面に反映されるのは、スタティックになりがちなノベルゲームの画面にダイナミックを加えたいという意図です。テキストを送るときに振動することに関しては、ノベルゲームの原体験はやはりマウスをカチカチとクリックし続けることだと思うんです。クリックというフィードバックとともにノベルゲームの思い出はあるんだという話をして、Switchでもこうしたフィードバックが欲しいと思って作りました。フィードバックの強さも自由に調整でき、こんなものかなと落ち着くまでに何回も作り直した部分ですので、お褒めいただいてとてもうれしいです。巻き戻しもそういう流れですね。
みお
ノベルゲームは通常バックログがありますが、『ghostpia』の巻き戻しはかなりいいですね。このゲームは絵が毎回動くので、戻ってスクリーンショット撮り直したいときがあるんです。少し戻して撮るのをくり返してたら、Switchのフォルダが1500枚ぐらいになっちゃいました(笑)
ミタヒツヒト
今とてもいいことを言っていただきました。バックログの一覧性もいいことではあるんですが、バックログだと演出とテキストが分離されてしまうんです。それはどうなんだろうと思っていて、hako 生活さんに巻き戻しの仕様を入れたいんですとお願いをしたら、「これはかなり難しいですよ」と言われたんです。たとえばプレイヤーは5秒かけてスクロールをしたけど、巻き戻すときは5秒で読んだことをゲーム上でどうやって記憶しておくのかという問題があるのですが、hako 生活さんの技術力で解決していただきました。こだわった相応にみなさんをお待たせしたので申し訳ないと思いますが、いい意味で変態的な機能を作っていただいたと気に入っている部分です。
カワチ
ちなみにSwitch版の制作期間はどれくらいだったのでしょうか?
ミタヒツヒト
2018年にリリースされた第四話のときには、Switch版のことを話していたので2018年には動いてたのは間違いないです。
カワチ
そのときから移植ではなく、フルリメイクで作ろうというのは決まっていたのですか?
ミタヒツヒト
最初の2カ月ぐらいは移植でいいかなと思っていたんですが、2カ月経ったら欲が出ました。
庵野ハルカ
今の巻き戻し演出にも関わる部分ですが、各エピソードのエンディングがシティポップ風の曲だったり、YouTubeのローファイヒップホップ配信ラジオを運営する「Lofi Girl」チャンネルの絵を想起させるレイアウトになっていたりします。ビデオテープのようなアナログ風味のグリッチ演出など、80年代的な雰囲気が感じられますが、こういった表現を採用しようと思った理由はありますか?
ミタヒツヒト
作中はノスタルジーが大きな割合を占めており、そのノスタルジーに真摯でいようと考えています。僕たち(超水道)は90年代ぐらいの生まれなんですが、僕たちにとってのノスタルジーはレコードでも8ミリフィルムではないんです。VHSだったりカセットテープだったりと「テープ」なんですよね。そこからブレてはいけないと最初に話し合いました。そしてノスタルジーを軸に、イマジネーションを周りに増やしていったイメージです。

ミタヒツヒト
エンディングをシティポップにしようというのは、音楽を担当いただいた高野大夢さんからのご提案だったと思います。エンディングはフルアニメーションで、少し変なのを入れてお客さんにビックリしてほしかったんです。これも実はカートゥーンへのリスペクトで、『アドベンチャータイム』という作品がありまして、本編は電子音楽で演出もガンギマっているのですが、エンディングはアコースティックな曲で、いい歌詞が流れて草原でハチさんが飛んでいるんです。そこで強制的にクールダウンさせられて、お客さんがポカンとなるんです。それが好きで『ghostpia』でも近い演出をやりたいと思っていて、雰囲気がガラッと違ってもいいのでどうしましょうと高野さんに相談したら、シティポップはいかがですかという流れでした。
庵野ハルカ
なるほど。あれはアニメ版『美味しんぼ』のエンディングのような強制的なチルなんですね。
ミタヒツヒト
そうですね。昔のアニメはそういう意味不明なエンディングが多かったですよね。
SIGH
現代音楽家の高野大夢さんに、『ghostpia』の音楽を依頼することになった経緯を教えていただければと思います。
ミタヒツヒト
高野さんは普段アクースモニウムなどを演奏し、アカデミック寄りの音楽活動をされている方で、ゲームのお仕事はあまりされないのですが、2011年頃に超水道が非常にお世話になっている方の紹介で知り合いました。少しずつ仲良くなるにつれ音楽を作っていらっしゃることを知ったり、演奏会にも呼んでいただいたりしました。ぼんやりといつか一緒にお仕事したいなと思っていたので、『ghostpia』の企画が出たときに、これはもしかして高野さんにお願いできるのではないかと考え、依頼させていただいたという経緯です。
みお
先ほど『ghostpia』はノベルゲームの問題点を解消することを目標にしたとおっしゃいましたが、キャラクターが「どうぶつの森」のようなボイスで喋るのはどういった目的で導入されたのでしょうか?
ミタヒツヒト
これも実は経緯のある質問でして、『ghostpia』をリリースする前の超水道は、コミケにも結構出展していたんです。規模が徐々に大きくなってきた同人ノベルゲームサークルは、そろそろボイスを入れるようになって格が1段上がるみたいな雰囲気があるかなと思っていて。超水道も次回作はフルボイスにしないのかと質問をいただくことが多く、「そうなんだ」と思っていました。ただボイスを入れるのは、音を切ったり演出つけたりして大変ですし、僕が演技指導に熱が入るタイプなので、リモートで声だけを収録するとなると多分ディレクションが難しくなると思い、ボイス実装は尻込みしてたんですよね。
ミタヒツヒト
なによりボイスはどんなに頑張って収録しても、どんなに上手な方に演じていただいても結局は飛ばすじゃないですか。もちろん飛ばさない人もいらっしゃいますが、僕自身がストーリーの先が気になって飛ばしてしまうタイプですし、飛ばすのがわかっているボイスを収録していただくのはダメじゃないかと思うんです。でもボイスがあった方がリッチになり喋っている感じも出るので、どうしようと考えたのが『ghostpia』の方法でして、機械が喋っているので飛ばしても罪悪感がないんです。でもこのやり方は意外と喋っている感じが出ませんか?
みお
キャラクターにより声に個性がありますよね、それが喋っている感じをより演出しているというか。
ミタヒツヒト
個性がありつつ脳内再生できっとこういう喋り方なんだろうなと想像ができる、いい補助線だと気に入っています。最初期に山本すずめくんにプロトタイプを作ってもらいました。 機械音のボイスは「あ」「い」「う」「え」「お」「ん」の6音で作っていて、ひらがなは「あ」「い」「う」「え」「お」に置き換えて、それ以外は「ん」になっているんです。『ghostpia』のセリフって僕が漢字をひらきがちなので、なんとなく言ってることがわかりますよね。「うんうん」は本当に「うんうん」って読んでいますし、「うれしいね」も「うえいいえ」なので、プロトタイプができたときはすごくうれしかったのを覚えています。そういった経緯でいいやり方を見つけたと感じたので、Switch版でも据え置きでやらせていただいてます。
カワチ
声優を使っていればそのことがウリにもなりますし、パートボイスのような方法も考えなかったのでしょうか?
ミタヒツヒト
その手がありましたね!パートボイスか~。
スーさん
ただ個人的にパートボイスは一長一短な気がしていて、全編パートボイスだと物足りなく感じる時もあるんです。だから『ghostpia』にかぎっての話ですが、今の機械音のままの方が統一感があり違和感はないと思います。
ミタヒツヒト
たしかに今の機械音で少し人間らしくない感じは、『ghostpia』と相性がすごくいいですよね。では異世界転生や学園モノのスピンオフなどを作る際には、ぜひパートボイスで(笑)
カワチ
ドラマCDやアニメになる未来があれば(笑)
ミタヒツヒト
実はドラマCDはあるんです。以前お友達の会社のコトリボイスさんという声優プロダクションがFMラジオで番組を1つお持ちになり、毎週流れるラジオドラマに『ghostpia』はいかがですかというお話をいただきました。僕が中高を通して演劇部に所属していたものですから、久しぶりに人が読む台本を書けるということで、「やります!」と返事をして、オーディションから演出までやらせていただきました。
スーさん
それでは『ghostpia』のキャストはもう決まっているのですか?
ミタヒツヒト
あくまでそれはラジオドラマでのキャストなんですが、 やはり同じキャラクターでも、別の人が演じればそれはそれでどんどん面白くなっていくんですよ。
みお
そのラジオドラマはコトリボイスさんのBOOTHで販売されてるみたいですね。
ミタヒツヒト
相変わらず治安が悪いのでぜひ。夢としてはアニメも面白いかもしれないですが、やはり僕は舞台に原体験があるので小劇場とかでやりたいですね。
庵野ハルカ
ゲームでもアニメーションを導入してる部分がありますが、全て内製されているのでしょうか?
ミタヒツヒト
99パーセント内製ですね。2人のスタッフで作っています。
庵野ハルカ
エンディングもですし、エピソードが後半に入るときのアイキャッチもですか?
ミタヒツヒト
そうですね。ルパン三世の話をしながら、アイキャッチの「ルパンザサ~ド」の感じだよねと言ってました(笑) 2人ともアニメーションフェチで、ジブリなどが好きなんです。好きなアニメを作ろう!好きなものだから組み込みたい!という気持ちです。
庵野ハルカ
アニメーションを導入したゲームは結構ありますが、「Live2D」だとか、アニメーションが入ったとしてもほんの少しだけという場合が多いと思います。一方『ghostpia』は量もありクオリティが高いということで、どこかに依頼して作ってもらったのかなと考えていたんです。そういうことではないと知り、すごいなと思いました。
ミタヒツヒト
もしお金がいっぱいあったら依頼したかもしれないですが、アニメーションを作ること自体が楽しいですし、作り手の魂がこもったものを見てもらいたい、そういう作品が世の中にあってほしいという気持ちで『ghostpia』を制作しています。 あってほしいものを作っているというのは、グラフィックチームにも共通するかと思います。

スーさん
あとグラフィック系の質問だと、セリフのふきだしの横にドットのちびキャラが表示されていますが、その部分ついての意図や狙いがあればお聞かせ願いたいです。
ミタヒツヒト
あれは美少女ゲームの顔グラフィックの代わりですね。現代になるにつれ立ち絵や表情差分がリンクした顔のイラストが、キャラクターのネームプレート付近に表示される作品が増えていったと思います。『ghostpia』制作当時の超水道はそうした「しっかりとしたゲーム」を、次こそ作ってほしいと言われることが多かったのですが、そのまま作ってもあまり面白くないというか、商業ゲームのような作品を同人ゲームで作ったとしても、それで「まるで本物」っぽくできたとして、結局は「本物みたいなおもちゃ」を作ったような気持ちになりそうだなと。だから自分たちなりに顔グラフィックを解釈して、代わりにピクセルアートを置きました。そうすると画面が読みやすくポップになりますし、ボイスの機械音との相性もとてもいいんです。
スーさん
少し話が戻ってしまいますが、巻き戻し機能でどこまでエピソードを遡れるのかをお聞きしたいです。
ミタヒツヒト
エピソードの頭まで戻れます。エピソードごとにビデオテープのカセットが入れ替わるイメージですね。デバッグのときに最初から最後まで何回も早送りをした思い出があります。
カワチ
ビデオテープを意識しているゲームだからこそ、仕様も「テープ」を軸に考えているという面白い話が聞けましたね。それではそろそろストーリーやキャラクターについての質問にうつりましょう。
庵野ハルカ
「ヨル」、「アーニャ」など、一部『SPY×FAMILY』とキャラクターのネーミングが一致していますが、なにか関係はありますか?
ミタヒツヒト
Ⓐ『SPY×FAMILY』の大ファンで自分の作品に『SPY×FAMILY』のキャラクター由来の名前をつけたかった、Ⓑただの偶然。どちらでしょう?(笑)
ミタヒツヒト
まぁⒷの偶然なんですけど。面白いですよね。『ghostpia』の制作開始が2014年あたりなので全然違います。
庵野ハルカ
それはそうですよね(笑) キャラクターのネーミングの由来はあるのでしょうか。
ミタヒツヒト
「小夜子」と「ヨル」はストーリー上で意味のある名前にしたいと思っていますが、あまり「キャラクターの名前に凝りました!」とはしたくなくて、素通りしてしまうような名前を付けがちです。ただ「パシフィカ」はヤマハのギターからではなく、『怪奇ゾーン グラビティフォールズ』という海外アニメに登場する、パシフィカというキャラクターがすごく好きでそこから取ってます。
スーさん
キャラクターに実在するモデルはおられますか?
ミタヒツヒト
『ghostpia』にモデルが実在するキャラクターはいないですが、先ほど話に出たドラマCDに登場するニコライは例外で、以前ひどい目に合わされた人物をモデルにしています。ドラマCDは尺が短い分、エキセントリックなキャラクターを用意しなくてはならず、リアルの体験の力を借りたイメージですね。
スーさん
またシナリオを執筆するなかで、ミタさん自身のお気に入りや、苦手なキャラクターがいたら教えていただきたいです。
ミタヒツヒト
一番好きなキャラはニコライです。登場キャラクターは全員好きですが、書くのは全員苦手で常に全力投球をしながら執筆しています。頭のなかでキャラクターが演技してるのを聞きながら書いているイメージですね。
スーさん
作中には「うんこ」などの素敵なワードも多いですが、そういった言葉もひねり出すというよりは、キャラクターとセットで自然と出てくる感じなのでしょうか?

ミタヒツヒト
「うんこ」はひねり出したというよりは宿便で、謂れのある「うんこ」なんですよ。以前僕が別のところで不義理をしてしまったことがあり、お世話になっていたプロの物書きの方が出展しているイベントで「最近どう?」と聞いていただいたので、「こういうことがあったんですよ。申し訳ないことしました」と答えたら、その人が「あいつらはうんこだよ」と言いながら、サインを書いてくださったんです。 「そっか、うんこって言ってもいいんだ」と気づかされて、「うんこ」と切って捨てる爽やかさがすごく心に残っています。
カワチ
そういう心が軽くなるワードとして、「うんこ」があるわけですね。
ミタヒツヒト
なるべくラフな言葉遣いで心に響く言葉を作りたいと常々思っているので、あまり言い回しを複雑にせず頭のなかでキャラクターの演技を聞きながら、セリフを微調整しています。
スーさん
「うんこ」1つとっても、たとえば「クソ」に置きかえると受け手の印象も変わるので、『ghostpia』としては「うんこ」がちょうどいいですね。作品全体としてもトゲがないし、ウィットに富んでいて。
みお
「9999年」という数字が出てくるのもですが、「クソ」よりは「うんこ」の方がいい意味で小学生みたいでいいなと思っています。
ミタヒツヒト
超水道は小学校のときから一緒のメンバーがいて、僕たちはマイルドヤンキーとオタクの二重苦と呼んでますが、気取らない喋り方でおかしなことを言って笑うのが好きなので、たしかにそういうところはあるかもしれないですね。
みお
よく作中で暴力の標的になってしまうクラーラは、普通に見れば愛嬌があって純粋でいい子ですが、小夜子たちは逆にそこが気に入らないと思っている。その考え方はミタさん自身の価値観が反映されているのでしょうか?
ミタヒツヒト
今まで善人に道を阻まれることが多かった気がします。幼稚園の頃はモラルのない子供で乱暴ばかりをしていて、その時の経験で「いけないんだよ」と言われるのがすごく嫌でした。 その経験以外にも、人生において厄介だったのはクラーラみたいなタイプだったという実感があります。自分の経験に基づかないままでは、ああいった描写は書けないですね。
みお
すごく解像度が高いですよね、ああいう感じの子の。
ミタヒツヒト
「あなたに蛮行をさせてごめんなさい」みたいな。ただそういう経験がない人もやはり世の中にいるんだなと思ったのが、『ghostpia』をリリースしたあとの一番の学びでした。もう少し作品寄りの話をすると、なにに「NO」を突きつけるかだと思うんです。善意らしきもの、あるいは自分たちと仲良くするために頑張っていることに「NO」を突きつけるのは、現実では基本できないんですよね。もちろんこういうことを描いたら、喜んでくれる方もいるだろうなという気持ちも少しはありますし、逆にこうした描写でショックを受ける人がいるのももちろん分かっています。だけどそれ以上に僕たちが作るべき作品は、今まで影響を受けてきた作品の再生産ではなく、変なものを作っていて面白いなと笑ってもらえることを示したいのです。
カワチ
逆に『ghostpia』で描かないようにしていることはありますか?
ミタヒツヒト
男女のロマンスでしょうか。どういうドラマなのかがぼやけてしまうと嫌なので。
カワチ
ただアーニャだけは、少し男の匂いがするというのもありますよね。
ミタヒツヒト
なんだかんだアーニャみたいなタイプに、男性は一番寄ってくるのだろうと思います。そしてアーニャのようなポジションのキャラクターは、フィクションにはあまりいないという気がしています。モテるキャラはモテるキャラの形をしていますし、メカニックで赤毛の口が悪い女の子は多分ほかにもいる。ありがちなステレオタイプの属性にのせつつ、少しだけずらして描写すると独自性を感じつつお客さんも飲み込みやすい。こういうキャラクターもたしかにいいよねと思ってもらえるようにするのが、アーニャを描く上で頑張った部分ですね。
カワチ
逆にパシフィカさんは少し近寄りがたい感じがします。
ミタヒツヒト
パシフィカさんは女性のプレイヤーの方から、非常に支持をいただいているキャラクターですね。
庵野ハルカ
私がストーリー的に面白いと思ったのが4話で、レーニャとミェトの関係性の話が面白いなと思ってプレイしてました。ミェトはレーニャに徹底的に尽くそうとするけど、レーニャは違う思惑があるというところを、オチで無理やり2人をくっつけて、関係を続けさせるところがすごいお話だなと思って、個人的にはシーズンワンの5話のなかでは4話が一番好きでした。人に尽くすことや人を好きになることの、怨念めいた怖い部分を描いていて面白かったです。4話に出てくる寄生虫のようなもののアイデアはどこから生まれたのでしょうか?実際に脳に入り込んで宿主を操作する寄生虫はいますが。
ミタヒツヒト
ハリガネムシとかロイコクロリディウム的なやつですよね。寄生虫というのはその通りですが、今思うと銀のダンゴムシは意味不明ですね。あれを怖いと思わせられたのは、僕の文章にあのデザインを与えてくれた、グラフィッカーの力のおかげだと思います。
庵野ハルカ
しかも腕に入ったダンゴムシを取るために、腕を吹き飛ばすじゃないですか。あの辺のバイオレンス表現もいいなと思いました。
ミタヒツヒト
PVを見ただけでは、自分で外科手術するような作品だと思わなかったとこの前言われました(笑)
スーさん
シーズンツーを合わせて全10話の構想だと聞いたのですが、4話で新キャラクターや展開を含めてガラッと雰囲気を変えたのは、最初から4話でああいった展開にするという構成に決めていたのでしょうか?
ミタヒツヒト
1、2、3話はセットのような部分があり、1、2話で出会って3話で共同生活をして次はどうなるっていう話の運び方は、ある程度共同生活ものとしてありがちな流れだと思います。そこで予定調和感を崩しこれからも面白いことやるので、すみませんがお付き合いくださいという気持ちで、家の上の階にかわいい女の子が住んでいて、その子が実はヤクの売人で部下をパワハラしているという展開にしました。

SIGH
自分は第5話が非常に好きなんですが、アレクセイというキャラクターは世界の謎を少し提示するという役割で登場したのではないかと思います。また『ghostpia』のキャラクターのなかでは特に癖の強い方だと思うのですが、どうやってキャラクターを作ったのかが気になりました。
ミタヒツヒト
アレクセイは僕が今までの人生で出会ってきた、賢い人たちを見たときの感慨が表現されているキャラクターです。とても賢くてずっと自分の研究をしている人は、ある意味なにかの敬虔な信徒だと思います。 宗教には限らないんですが、これはきっとこうなんだという1つの真理に憑かれてる感じが好きで、そういったキャラクターを書きたいと考えていました。5話で物語上こういうイベントを起こしたいという構想と、うまくミックスできたと思います。
SIGH
科学者・エンジニアかつ敬虔な人間でもある部分で、アインシュタインみたいだなと思いました。
みお
アレクセイはオタク的な部分が好きで、卑屈だけど卑屈にしようと思っていないというか、自分でもダメなことはわかっているけど、どうしてもこうなってしまうという描写がよかったです。
庵野ハルカ
アレクセイはよくあるテンプレ的なオタクではないのがよかったです。フィクションに登場するオタクは、いわゆる「キモオタ」として描かれがちな傾向があると感じるんですが、アレクセイの場合はミタさんがドラマを描こうとしている意識があり、オタクかつ優秀なエンジニアでしょうもない部分もありつつ、自分の所属する社会との関わりもきちんと描かれており、奥深さが生まれてると思います。
ミタヒツヒト
やはりステレオタイプにしてしまうと、本当にステレオタイプで終わってしまうので、なるべくどのキャラも掘り下げてあげたいですよね。
SIGH
『ghostpia』はテンプレみたいな性格のキャラが、1人もいないのがすごいなと思います。
カワチ
主人公の小夜子がニンジャというのは、ミタさんの趣味ですか?
Question: If you were mistaken for a ninja on the way to a friend's house, what would you do? 🤔
— 超水道 @ ghostpia (@chosuido) 2023年7月31日
Answer: Just roll with it and act like a ninja!☝️🤓#ghostpia pic.twitter.com/RAFwnczvb7
ミタヒツヒト
海外アニメに出てくるウソ日本が好きなんです。現実ではありえないですが、外国人が日本人をみんなニンジャだと思っているみたいなことを、いい感じに戯画化したら面白いのかなと考えてました。ニンジャという設定だと特殊能力やスーパーパワーといった、アメコミ感が少し出ますよね。
カワチ
ニンジャのシーンで流れる音楽もいいですよね。
ミタヒツヒト
あれは「十万石まんじゅう」という、テレビ埼玉で流れている地元の銘菓のCMがありまして、そのBGMが元ネタなんです。高野さんにこのCMの音楽を聞いていただいて、これっぽくお願いしますと依頼するときはさすがに冷や汗をかきました。
カワチ
それでは埼玉の人が『ghostpia』をプレイしたら、この音楽は「十万石まんじゅうだ!」となるんですね。
ミタヒツヒト
そうですね。やはり埼玉といったらニンジャですから(笑)
カワチ
小夜子は主人公にしては感情移入がしづらい複雑なキャラクターで、主人公として立てるには苦労されたかと思うのですが、どうやって描こうとしましたか?
ミタヒツヒト
たしかに小夜子はプレイヤーと同化するタイプの主人公ではないかもしれないですね。元々『ghostpia』は無料でリリースしようとしていたので、感情移入というよりはフックとしてキャラの立った主人公にして、面白いやつだなと思ってもらえればいいと考えていました。もし合わなかったら、読まなければいいだけですしね。そういうオリジンはありつつ、心情描写が足りないと本当にただ暴れ回っている人になってしまうので、なるべく地に足のついた描写というか、変なことはやっているけど結局は友達の役に立ちたいとか友達と仲良くしたいという、誰もが持っている感情で駆動してもらっています。そしてありがちな主人公を描いてもしょうがないので、少し変わったことをやりたいという一環ではあると思います。
カワチ
あとストーリーやキャラクターについて、聞きたい人はいますか?いなければ次はミタさん自身や超水道についてのこれからについて、聞いていこうと思います。まず僕が1個質問したいのはミタさんや山本すずめさんのように、学生時代からのメンバーと長く続けていく秘訣を聞いてみたいです。

ミタヒツヒト
超水道のメンバーはみんな性格がよくて、いい人たちなんですよね。 本当に彼らの人格が優しいので、超水道はなんとかなっているのだと思います。強いて言うならやはり頑張ることに対して、なるべく結果が見えるように頑張るというか、『ghostpia』は制作をしているだけという期間が5年ほどあったのですが、そのなかでも「これができたね」、「こういうことがあったね」と言い合い、感想をもらったら逐一みんなで喜んだり、やばいことになったらみんなで泡食ってどうしようと夜中までしゃべったり、時間が動いてる感じを出していく、感情を共有していくことは昔からずっと気をつけてきました。
ミタヒツヒト
あとは言葉をケチらないというのを僕は考えていて、ただ「すごいね」、「面白いね」ではなく、「ここがこうすごいと思いました」と言うようにしています。僕が最初に文章をあげたときも、超水道のメンバーが詳細に感想を書いてくれて、チームメイトが最初の読者・閲覧者である意識をチーム内で共有しているのが、うまく回っている理由の1つなのかなと勝手ながら思っています。
カワチ
なるほど、それはとても大事ですよね。どうしても長く続けてると「了解」とか「ありがとう」ぐらいになりがちですが、1つ1つきちんと感想を言うのがモチベーションに繋がりますからね。
ミタヒツヒト
そこは気を付けてる部分ですね。ただ僕がすごい褒め下手なのが、昔からコンプレックスなんです。いつも言葉が具体的すぎて褒め方が怖い、本気で言ってないのではないかと思われてしまいます。超水道は今年で15年目ですが、 まだいいバランスを見つけられていないですね。ただ言わないよりはマシだと思って、言うようにしています。
庵野ハルカ
超水道さんはモバイルアプリ制作から活動をはじめられていますが、そもそもなぜモバイルでゲームを作ろうと思ったのでしょうか?
ミタヒツヒト
元々2008年の高校生の頃からWindows向けのノベルゲームを、NScripterや吉里吉里で作っていたのですが、 大学生の頃に講義のゲストだったメディアの最先端のような人が「これからはモバイルアプリの時代だよ」っておっしゃっていたんです。それで講義が終わったあとに、当時すでに結成していた超水道のメンバーと、「なんかこれからはモバイルアプリの時代らしいよ!」とそのままなにも考えずに、いつの間にか動いてた感じです。
庵野ハルカ
その頃はまだスマートフォンの普及率が今ほどではなかったと思うので、いきなりモバイルからはじめるのは最先端だと思います。
ミタヒツヒト
当時iPod touchがiOSの普及を押し上げていたイメージがあり、僕もiPod touchで開発していました。iPod touchは非常に画面が綺麗で、文字もハッキリと表示されるのに感動して、開発を頑張ろうというモチベーションになりました。
カワチ
PCに移植したいと思うことは、なかったのでしょうか?
ミタヒツヒト
PCにもマルチで書き出せるエンジンを使っており、実は細々とPCパッケージ版をコミケで売ったこともあります。ただコミケでパッケージを指差して、これモバイルだと無料で出てるんだよねと言われて、売りづらさはあったかもしれません。
SIGH
超水道さんのブログで、新規のノベルアプリを制作する構想があると書かれていましたが、今後もiOSのみでリリースされていく予定なのでしょうか?androidだけどプレイしたいという人も、大勢いらっしゃると思います。
ミタヒツヒト
開発エンジンはandroidでもリリースできるものを使っているのですが、androidだとサポートする部分が無限で、超水道が4人しかいないためデバッグに責任が持てないのです。androidの方には申し訳ないので、ネイティブアプリではないですが、ノベルスフィアに作品をあげていたような形でWEBアプリを用意しようと考えています。

SIGH
あと過去作を『ghostpia』のように、移植される予定はありますか?
ミタヒツヒト
考えたこともなかったです。お金と時間が無限にあればやりたいのですが、それよりはシーズンツーを早く制作してほしいとお客さんは思いますよね。
SIGH
『ghostpia シーズンワン』をプレイして、超水道さんの過去作が気になっている方も多いと思います。それでは今過去作をプレイするならiOSかノベルスフィアという形ですね。またブログの話になりますが、以前から「超水道月報」を楽しみに見ており、現在は更新が止まっている様子ですが復活する予定はありますか?
ミタヒツヒト
月報はそもそも超水道が、『ghostpia』の開発が長引きながらもきちんと進んでいると報告し、安心していただくために投稿していたので今はお休みをしていますが、また動いている状態になったら復活する可能性はありますね。
SIGH
超水道メンバーさんたちの近況が知れるということで、面白く読ませていただいてました。
ミタヒツヒト
毎月ヒーヒー言いながら更新してたので、そう言っていただけてありがたいです。
カワチ
超水道ラジオは復活しないのでしょうか?
ミタヒツヒト
超水道ラジオは編集が大変なんですよね。自分たちでハードルを上げて、ヒーヒー言うのを何回も繰り返していますが、これもやりたいことリストに入っています。 その代わりに最近はTwitterスペースをぼちぼちやりたい気持ちがあり、そういった形で超水道ラジオをこれからも続けていくことはあるかもしれないです。
カワチ
これから超水道を大きくしていこうという気持ちはありますか?超水道に蜂八憲さんが途中参加したのは大きな出来事だったと思いますが、もう超水道のサークルメンバーは4人で固まっている感じなんでしょうか。
ミタヒツヒト
考えたこともなかったです。実は蜂八さんのあとにも超水道に参加したいと言ってくださる方もいらっしゃいました。ただ超水道はやることが結構ハードなので、やりたいことがあるなら1人でやられた方がいいとか、自分のペースで制作ができなくなってしまうとお伝えし、折り合いを考えて「今回はすいません」と断ることがありました。でも最近は超水道に入りたいとお声かけをいただくことがそもそもないので、多分これからもメンバーは増えないと思います。ただピンポイントでお手伝いをお願いすることはあるのではないでしょうか。
カワチ
今回『ghostpia シーズンワン』の制作で、hako 生活さんが参加されたような形でしょうか?
ミタヒツヒト
そうですね。あとはたとえばグラフィックの物量が多いので、アシスタントのお願いをすることはあると思います。
スーさん
超水道のメンバーのみなさんは社会人をしながら、ゲーム制作を行われているということですが、どのように会社員とゲーム制作を両立されていますか?
ミタヒツヒト
超水道は会社員をしながら業務後にゲームを作っているので、本当に同人サークルのたたずまいです。基本的に仕事がやばくなると、制作に取りかかるのも大変になるので、助け合いながらやっています。
スーさん
それではメンバー4人それぞれの仕事と並行しながら、制作をされている形なんですね。
ミタヒツヒト
今はなぜか4人とも同じ会社に集結しておりまして、会社で同じプロジェクトに関わることもあります。この前も僕と山本すずめくんでプロジェクトをしていて、2人で打ち合わせに行った帰りに「実質このプロジェクトは『ghostpia』では?」と言いながら、ドトールでコーヒーを飲んだこともありました。
スーさん
それは面白いですね。本当に公私共々というか、超水道としても仕事としてもずっと一緒ですね。
カワチ
それでは「もう超水道をやめようか」という話は、まったくなかったということですよね。
ミタヒツヒト
やめるタイミングがなかったので、そのまま続けている感じです。社会人になったのと同時にサークルをやめるのを格好悪く感じた、22歳当時の「意地でも超水道を続けるぞ!」という気持ちが、今でも続いているのかもしれません。
SIGH
会社員を続けておられるのは、ゲーム制作を安定して続けていくためとインタビューで語られていましたが、超水道の活動で問題なく食べていける状態でも、会社員を続けていかれる展望なのでしょうか?
ミタヒツヒト
ゲーム制作だけで食べていける超水道は、超水道なんですかね(笑) そのときになったらメンバーそれぞれのスタンスで分かれるかもしれません。僕は今の仕事が結構好きということもありますし、社会のなかでいろいろな人に会うのが人間の描写の糧になると思います。社会とはずっと繋がっていたいので、相当すごいことにならないと僕は仕事は辞めないと思います。でも実際にいっぱいお金が入ったら、そのとき何を思うかはわからないですね。
ミタヒツヒト
今働かせていただいてる会社も学生時代から、超水道のことを社長さんがずっと応援してくださっていて、この前も京都でBitSummitというゲームイベントがあったときも、「こういう理由で行ってまいります」と言うと、「頑張ってきてね」と返してくださるので、その人を裏切るわけにはいかないですね。
カワチ
『ghostpia』で今後やってみたい、作ってみたいグッズはなにかありますか?
ミタヒツヒト
僕は万年筆が好きなんですが、コラボペンやコラボインクが欲しいなとか思っているんです、クラーラの血の色とか(笑) そういった構想はあるのですが、どんなグッズがいいのかはみなさんのお力をお借りしたいところです。
カワチ
ジジイのグッズは欲しいですよね。
ミタヒツヒト
実はジジイのTシャツは前に作っています(笑) レッドババア・ブルージジイというアイテムですが、超水道のSUZURIにあるので買えますね。恐ろしいことに何枚か買っていただいています。買った人が迫害されてないといいですが(笑)
庵野ハルカ
今回聞いておかなければいけないと思ってこの質問をします。シーズンツーの完成はいつごろになりそうでしょうか?
ミタヒツヒト
これは聞かれないといけない質問ですね。ただすみませんがお答えしがたいところがあります。僕はもうすぐできますと言ってしまいたいタイプなんですが、実際の制作進捗でガッカリさせてしまうかもしれません。満足のいくクオリティで仕上げるよう頑張りますので、完成を楽しみにお待ちください。
庵野ハルカ
大丈夫です、すみません。いつまでも待っていますし、楽しみにしています。 あとはストーリーに関わる部分ですが、作中で各エピソードの終わりに現実世界のような意味深な映像が流れていますが、やはり物語の核心に関わってくるのでしょうか。
ミタヒツヒト
それはシーズンツーを最後までプレイして、意味があるのかないのかを自分の目で確かめてくれ!
庵野ハルカ
3回目ですよ、このやりとり(笑)
ミタヒツヒト
聞いていただくのは自由ですし、うれしいですね。こういうこと以外ならなんでも喋りますよ。

カワチ
それではアニメでもゲームでも映画でも、最近ハマっているエンタメはなにかありますか?
ミタヒツヒト
最近は『ELDEN RING』をやっていて楽しいですし、『君たちはどう生きるか』も見ました。あと『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』は、 僕と山本すずめくん2人とも見て「やべぇ」と言っています。グリッチの表現など『ghostpia』と少し通じるところもあって刺さりました。僕らはそれぞれ見ているエンタメが違うんです。お互い「このアニメ面白かったから見てよ」と言われても絶対見ないのですが、「スパイダーバース」は見る、「スプラトゥーン」はプレイするという中間地帯があります。あと『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』もインターネットでネタバレされる前に、頑張って自分でクリアしました。大変すばらしかったと思います。
カワチ
ネタバレはしない程度に『君たちはどう生きるか』はどうでしたか?
ミタヒツヒト
僕は大好きでした。 「『DARK SOULS II』みたいな話だね」と会社で言ったら、そこは『ELDEN RING』だろうと言われました。
カワチ
クリエイターとして、ああいった作り方の作品に憧れはありますか?
ミタヒツヒト
僕個人としてはとても憧れるし、なんというか大きな神様を見たような気持ちになりました。
SIGH
カートゥーンがお好きだという話は先ほどうかがったのですが、それ以外のゲームや本での好きなタイトルやクリエイターの話を、教えていただければと思います。
ミタヒツヒト
まず『ダブルキャスト』が好きです。 あとノベルゲームだと『沙耶の唄』や、1作目の『WHITE ALBUM』が好きです。そしてビッグタイトルは基本好きで、「メタルギア」シリーズは世代なのでプレイしましたし、「テイルズ オブ」シリーズや「バイオショック」シリーズも好きです。『バイオショック インフィニット』がとてもよかったです。
ミタヒツヒト
アニメは基本的に海外アニメが好きで、国産アニメはあまり見ないのですが、ギリギリ国産の『ファイアボール』というディズニー・チャンネルで配信しているフル3DCGアニメは、ここ数年で一番のヒットと言っていいぐらいの大好きな作品になりました。
カワチ
『ファイアボール』がやっていたのは、結構前じゃなかったでしたっけ?
ミタヒツヒト
シリーズ完結編となる『ゲボイデ=ボイデ』が、2020年に配信されています。「Disney+」に加入した拍子に見たのですがよかったですね。ドロッセルお嬢様は本当にすばらしい造形だと思います。 好きな本は『電脳コイル』というアニメのノベライズで、それがフィクションのなかで1位を争うくらい好きです。ノンフィクションだと米原万里さんというロシア語通訳の方が書かれた、『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』という本があって好きです。『ghostpia』のアーニャとは関係ないんですが、『ghostpia』の4人の関係性が好きな人であれば、気に入ってくださるのではないかと思います。エッセイではあるんですが、少女時代の女の子同士のお話をずっとされていて、それがすごく素敵なんですよね。
ミタヒツヒト
あと『灰羽連盟』を忘れてはいけないですね。これは僕にとっては聖典なんです。安倍吉俊さんだと『serial experiments lain』の話がされがちですが、僕は『灰羽連盟』派です。『ghostpia』で小夜子とヨルが仕事を求めてウロウロしてるのは、その影響があるのかなと思います。仕事を探すためだけにすごく尺を割いたアニメなんですよ。
庵野ハルカ
すごいですよね。最初のほうはずっと仕事を探していて、今の深夜アニメだと少し厳しいテンポ感だと思います。今はとにかく話を前に進める方向なので、あそこまでゆったり進むアニメはもうなかなか見ないですね。
ミタヒツヒト
本当に大好きで、超水道のメンバーから誕生日プレゼントでもらった円盤は宝物です。
カワチ
『ghostpia』の制作と関係なく、無限に時間とお金があったら作ってみたい作品はありますか?
ミタヒツヒト
18~19歳くらいの超水道が生まれたばかりのときに、最初のオリジナル作品として出そうとしたタイトルですね。オープニングをフルアニメーションで作りたくて、みんなでトレース台を買って制作したのですが、オープニングのアニメーションができたのがコミケの1ヶ月前で、ほかはなにもできてない失敗プロジェクトをやってしまいました。それを最後まで作れてないのがずっと心残りなんです。 今でもプロットやキャラクターは山本すずめくんに描いてもらったのがあり、お話も用意してあるのでそれを作らないことには安らかに死ねないと、いつも思いながら生きているので、時間が無限にあったらそこから手をつけるかもしれないです。それもノベルゲームですので大して変わり映えはしないのですが、悲願や夢といった欲求です。

カワチ
そろそろまとめに入りましょうか。今回のまとめとして僕たちが『ghostpia』の感想や、こんな人がプレイしたら楽しいのでは?といった話をして、ミタさんに最後を締めていただく形にしようかなと思っています。それでは僕からはじめますね。『ghostpia シーズンワン』は値段も税込2300円で安く、コミック的な演出やゲームならではの楽しみもあるので、普段アドベンチャーゲームをプレイしない人にもぜひ触ってみてもらいたい作品です。そしてストーリードリブンのゲームがしたいけど、文章を読むだけのゲームが少し合わないと思っている人にもぜひプレイしてほしいですね。ノベルゲームだけではなくアドベンチャーゲームの入門としても絶対に楽しい作品だと思います。
みお
2023年上半期ベストゲームを決めたのですが、『ghostpia シーズンワン』を1位にしました。そのときはクリアしたばかりで熱が冷めてないのかもしれないと思いましたが、時間が経ってみても未だに暫定1位くらいに気に入っています。ミタさんの詩的な独特な語り口、山本すずめさんの可愛らしいイラスト、そのなかに光る暴力表現やトラックもいいですし、HD振動とジャイロ操作でプレイヤーと物語の一体感が引き立っていて、アドベンチャーゲームとしては、ここ数年で一番感動したぐらいのゲームです。先ほど小夜子が感情移入しづらい主人公という話がありましたが、私は思考回路が似ている部分も多く感情移入できるところが結構あり、そういった面でも心に残る作品になりました。
SIGH
自分の考える『ghostpia』の魅力は、まだ世界観に謎が多くフワフワとした印象を受けますが、そのなかで生きているキャラクターたちの感情や思考が、生っぽいというか地に足がついていることが大きいのかなと思っています。自分も小夜子は非常に感情移入をした方でして、阻害感を感じていたり友人との関係に悩んだりする心情描写は、私たちにも通じることも多く、行動の軸に幸せとはなにか生と死とはなにかという洞察や、友人との絆を大切にしたいというシンプルな感情があるのがすばらしかったです。小夜子が少しずつ肯定できる部分を見つけ、友人たちとも関係を修復しながら前に進んでいくストーリーに感動しました。プレイする前はビジュアルからアーティスティックな作品かなと考えていたのですが、コメディやバイオレンスな描写も巧みでエンタメとしても強く、音楽や演出も非常に素晴らしいので、個人的にノベルゲームに求めることがすべて詰まっている作品だと思いました。自分も今年の暫定1位のゲームは『ghostpia シーズンワン』です。
スーさん
自分はゲームや映画はインディーよりは大衆向けというか、みんなもやっているゲームを好む傾向にあります。『ghostpia シーズンワン』も最初はムービーなどを見てアーティスティックというか、少し斜に構えたゲームなのかなと思っていました。その後カワチくんをはじめとする周りの人の口コミを聞いてプレイをしたのですが、自分のなかでインディーゲームというジャンルの間口を広げてくれた作品になり、ノベルゲーム好きとしての新たな楽しみに気づけて、ゲーム開発の立場にいる人間としても身が引き締まる思いを感じました。おすすめしたい人という意味だと、ノベルゲーム好きな人はもちろんですし、逆に今までノベルゲームをあまりプレイしてこなかった人にも勧めたいです。あとは映画になりますが、『グーニーズ』や『スタンド・バイ・ミー』のような、暴力性を秘めたノスタルジックな青春ものが好きな人にもおすすめです。
ミタヒツヒト
『グーニーズ』も『スタンド・バイ・ミー』も大好きです。
庵野ハルカ
『ghostpia シーズンワン』をプレイして、本作はノベルゲームを進化させている1本だなと思いました。ノベルゲームは基本的に立ち絵とテキストがあってという形式のゲームだと思われてはいるんですけど、商業でもインディーでもさまざまな工夫がされている作品が登場している流れをここ何年かすごく感じています。『ghostpia』は立ち絵を出すだけではなくドットやアニメーション、どういうふうにキャラの絵を配置するのかといったビジュアル的なアイデアを詰め込んでます。画面の構成の仕方に関しても、16:9の画面に合ったような演出をされていて、今のノベルゲームというのをきちんと考えて作られてるんだなとすごく感じたんですね。 それで実際今日お話を聞いてみて、やはりそういう意識があって作られてるんだというのがわかったのが、納得感がありよかったです。僕自身もノベルゲームを割とプレイするので、いろいろな作品でなぜこんな古臭いことをやってしまっているのだろう?と思う瞬間もあるんです。ですが『ghostpia』はインディーゲームならではのアプローチで、ノベルゲームそのものの枠を広げていこうという姿勢がとても好きでした。そのため僕も2023年上半期では上位のゲームになりますね。
庵野ハルカ
このゲームはノベルゲームはこういうものだよねと、イメージがある人ほどプレイしてほしいです。ノベルゲームは文字を読んでいるだけのやつでしょう?と思われているかもしれませんが、そんなことはないんだノベルゲームは進化しているんだと『ghostpia シーズンワン』をプレイすれば理解してもらえると思います。ストーリーも根底にきちんと作者の思想が見えるというか、キャラクターの死生観や言動・考え方に一貫したものが存在していて、非常に読みごたえのある物語です。
カワチ
ありがとうございました。それでは最後にミタさんにもお聞きしたいと思います。
ミタヒツヒト
今日は「うんこ」の由来も少しだけ話させていただき、とても楽しい時間でした。ありがとうございます。正直な話今日呼んでいただいたことにびっくりしています。『ghostpia シーズンワン』はゲームライターさんなどのゲームの批評をされている方には、見向きもされない作品だと思っていたんです。 ただ読み進められて捨てられてしまうかもしれないと感じながらリリースしましたし、工夫は凝らしたのですがシンプルな作品ではあるので、興味を持って真摯に見てくれるのかなと考えていたのですが、こんなにしっかりと向きあっていただいてうれしいです。 本当にそこが不安だったので、『ghostpia シーズンワン』は本当に幸せな作品だと思います。
ミタヒツヒト
この作品をプレイしてほしい人を僕なりに考えてみたんですが、変な作品があったらいいなと思って変な作品を作ったんですよね。 だから変な作品が好きな人はぜひプレイしてほしいですし、世間に恨みがある人はもっとプレイしてほしい。いろいろな人の感想を聞いていると、結局そういうところに収束しているのかなと思います。もっと言うなら世間に恨みがあるのに人間のことは好きなときは好きみたいな、少しひねくれた人に刺さるのではないかと思います。
スーさん
あとはクラーラみたいなタイプの人にも、あえてプレイしてほしいですよね。クラーラ視点からの感想を聞いてみたいです。
ミタヒツヒト
そういう人から低評価がついたらどうしよう(笑) 今はSteam版を今年の夏にリリースするために頑張っています(※発売中)。『ghostpia シーズンワン』を世の中に送り出すためのラストスパートとその後のシーズンツーに向けて、まだまだ走っていきますので応援いただけたらうれしいです。ノベルゲームはアクションゲームなどと違い、こんなのを作りましたと途中経過を見せることができないのですが、きちんと作っていることはお知らせできるように頑張っていきます。

『ghostpia シーズンワン』購入ページ
Switch版
Steam版
『災難探偵サイガ~名状できない怪事件~』ネタバレなし感想
『災難探偵サイガ~名状できない怪事件~』はSwitch向けにディッジより2023年3月3日発売された「コミカル災難アドベンチャー」だ。PC(Steam)向けにも発売予定だが現状未定である。シナリオはクトゥルフ神話をベースとした作品を多く手掛ける黒史郎が担当し、キャラクターデザインはおおぐろてんがつとめる。

本作には『災難探偵サイガ 探偵の史上最悪の災難』という、ゲームより時系列が後になる続編小説が存在し、初回限定盤にはそれとサウンドトラックCDが付属する。

ゲーム本編はエピソード1~6まであり2時間強でクリアできる。そしてスタッフロール後に10分程度のエクストラストーリーが2本解放される。そのため多く見積もっても3時間弱程度でゲームはクリアできるだろう。
ゲームをプレイしていて良かった点と気になった点をサクッと挙げていきたい。
良かった点
魅力的なキャラクターたちによるドタバタストーリー
さすがシナリオを手掛けたのがプロの作家ということで、話運びのスムーズさとキャラクターを立て方が非常に巧みであった。2~3時間の尺のなかでキャラクターたちの魅力を描き、プレイヤーの作品への没入を促している。
主人公である災難つづきの大不運な探偵「天堂サイガ」をはじめとして、ミステリアスな守銭奴の探偵助手「ヒン・レイ」、サイガのことが大好きで探偵事務所の経理・事務を担当している小学生女子「蝶乃サナギ」、仮面をかぶったオカルトオタク少年「尾田国麿」といった一癖ある人物ばかりだ。そのほかにもギャルの情報屋「ミルぽん」や、ドローン・ジジイこと「DG」や公園に住むホームレスなど舞台である「祭鳴町」への愛着が増すようなキャラクターばかり登場し、バリエーション豊かな登場人物たちは本作の大きな魅力だろう。終盤では今まで出会った人たち全員と協力するような展開もあり、思わず胸が熱くなった。キャラクターボイスはパートボイスであり、日常会話では挨拶程度しか喋らないが、重要な場面ではきちんと全文声優による演技がついているためあまり気にならなかった。

ゲームはオーソドックスなアドベンチャーゲームであり、マップ画面で指定の場所を選択して進行していく。シナリオ上あまり関係の無い場所にも行け、キャラクターたちの小話が聞けるのは、登場人物と世界観の掘り下げに役立っていた。ただゲームを進めるなかでフラグが立ち目的地を選択すると問答無用でシナリオが進むので注意が必要。アドベンチャーパートでは時おり選択肢が存在し、そこではセーブができないがどちらの選択肢を選んでも同じ展開だったり、即ゲームオーバーになって直前の選択肢に戻ったりするので、あまりセーブができないことは気にならなかった。

開発陣のプレイヤーを楽しませたいという意気込みも伝わるような作品で、ゲームにはアドベンチャーパート以外にも2か所ほどミニゲームパートが存在する。簡単であるためゲームの進行を阻害しないことと、プレイヤーがゲームへ介入できるインタラクティブな要素を入れることで、より飽きずにプレイができる。

オカルト要素満載な小ネタ

ストーリーはゲームのサブタイトルに「名状できない」と付いているように、クトゥルフ神話がモチーフとなっているが明言自体はされない。馴染みの薄いプレイヤーでも入りやすいだろう。エピソードの最初に主人公の事務所をポイントアンドクリック方式で探索できるが、そこではオカルトを扱ったゲームらしくさまざまな世界中のオカルトについて小ネタがきける。私はこういった小話が大好きなので嬉しい要素であった。
気になった点
洗練されていないシステム

公式サイトを見るとディッジは今までゲーム・アニメ・映画等のCG制作や、モバイルアプリ開発を中心に手掛けているようで、コンソール向けのゲームは本作が初のようである。そのためかシステム面で気になる点がいくつかあった。システムコンフィグは言語選択、テキストスピード、各種音量くらいしか変えることができなかった。
ゲーム部分は偉大な先行作品の多いアドベンチャーゲームというジャンルであるおかげか、あまり粗は目立たなかったが、事務所でのポイントアンドクリックパートでは、物品を選択するとその後毎回カーソルが中央に戻るのが不便に思えた(探索するときは近い位置から順序よくクリックしていく人がほとんどだと思うので)。そしてこのパートでは発生条件は不明だが、たまにゲームの処理落ちがかなり酷く、カーソルが動かなくなりまともにゲームをするのが不可能になった。ゲームをリセットしたら直ったが、SNSで検索すると他の人も起きているようで、この現象はどうやら自分の環境だけではないようだ。なにかしらのアップデートを願いたい。また自分はそうとは思わないが3時間弱のプレイで、ダウンロード版が2728円(税込)というのは少々お高いと感じる人もいるだろう。
今後ゲームであれ小説であれシリーズが続いていくのであれば、追ってみようかなと思える作品であった。またサイガたちの活躍が見たいので、次は小説版を読もうと思う。
FF14「漆黒のヴィランズ」を終えた感想
以下の感想は『ファイナルファンタジー14』の「漆黒のヴィランズ」パッチ5.5までのネタバレを含みます。

「紅蓮のリベレーター」の感想

ついに「漆黒のヴィランズ」が終わって、最新拡張である「暁月のフィナーレ」に突入した。評判通りの素晴らしい体験の連続で、今までFF14をプレイしてきて良かったと思う。現時点ののプレイ時間は23日と15時間つまりは「567時間」である。飽き性な自分にとって、人生で1つのゲームにここまで時間を費やしたのは初めてだ。
私はRPG好きを名乗っているとおり、今まで多くのJRPGをプレイしてきた。FF14は「漆黒のヴィランズ」終了時点で、JRPGの最高峰に名を連ねる出来であるのは間違いないが、これから「暁月のフィナーレ」でさらにレベルが上がるのは、正直に言って全く想像できず期待が募るばかりだ。
さて本題である「漆黒のヴィランズ」の感想に移りたい。
まず「漆黒のヴィランズ」のシナリオはファイナルファンタジーらしいヒロイックファンタジーの構造でありつつも、従来の光と闇の立ち位置を反転させ、ツイストの効いたオリジナリティあふれるシナリオを展開しているのが特徴だ。
愛・光や闇・英雄といった姿形のないものをテーマにすると、必然的に扱う言葉もぼんやりとした印象となってプレイヤーの感情を上滑りし、フワフワと軸がなく頼りないシナリオになってしまうことも多い。
FF14は長期間運営してきたMMORPGだからこそ物語ることのできたストーリーで、今までプレイヤーが歩んできた(私で言えば567時間)膨大な足跡が存在することで、たとえ抽象的な事物を扱ったとして、それを語る「惑星ハイデリン」の住民たちの喜び・苦悩といった背景を知っているため、地に足がついたシナリオだと感じられる。

「漆黒のヴィランズ」では先に述べた通りの歩んできた道のりが、ゲームのバックボーンだけでなく、シナリオ自体にも組み込まれ可視化されてプレイヤーに提示される。作中で「第八霊災」が起きたもう一つの未来では、主人公が今までが成しえてきた英雄譚が、荒んだ世界に生きる人々のしるべとなっていた。
それは間違いなくプレイヤーが主人公である「光の戦士」を操作した結果であり、そうして生まれた希望が「漆黒のヴィランズ」本編と未来に繋がっている。長い時を経ても英雄がエオルゼアを救った物語は語り継がれ、その物語に誰かが救われていたという描写はプレイヤーにとっても救いである。自らの行いが巡り巡って自分に戻ってくるという美しい円環構造であり、だからこそシナリオを通して描かれた、本当に本当にさまざまな「託された想い」のゆく末は、というストーリーの流れは美しく説得力がある。
私がFF14をプレイしてきて一番好きになったキャラクターは「グ・ラハ・ティア」である。英雄への憧れを抱き光に焦がれた彼は、自らが主役の器ではないことを自覚しながらも、たったひとりのために名を捨て100年に渡り準備をして、見事「世界ひとつ救ってみせた」。その憧憬と愛と執念と献身は本人が認めようが認めまいが、まさに英雄の所業であろう。
また「紅蓮のリベレーター」で追加された、主人公以外を操作するバトルを活かした演出も素晴らしく、各種ロールクエストや5.5最後の「黎明の死闘」はあらゆるキャラクターの行動に実感を持たせ、感情移入させる装置として機能していた。

私は「新生エオルゼア2.0」から「漆黒のヴィランズ5.5」まで通底するテーマは、「願い」と「継承」だと考えている。「漆黒のヴィランズ」ではシナリオでかなり直接的に描かれていたが、ただそれは先に述べた「希望」のような輝かしいものばかりではない。たとえば「蒼天のイシュガルド」で描かれた人間とドラゴンの対立「竜詩戦争」や、「紅蓮のリベレーター」の舞台であるアラミゴ・ドマの長きに渡る帝国の支配とそれによる弊害も、ある種そこに生きる人々にとっての「願い」と「継承」の形だろう。
そうした問題を丁寧に解きほぐし、ゲームを通して人間の善悪の多面性を丹念に描いていたからこそ、今回アシエンの背景が明かされたとて陳腐にはならず、「漆黒のヴィランズ」の"悪役"であるエメトセルクやエリディブスの人間味として機能していた。
「漆黒のヴィランズ」ではキャラクターの関係性も練られており、主人公とエメトセルク/グ・ラハ・ティアとエリディブスの役目の対比が物語に厚みを与えていた。そうしてあらゆる視点で描かれる物語は、味方と敵・善と悪・光と闇という従来の二項対立に収まらず、ファイナルファンタジーでありつつも、脱構築に至っている。


本編後のレイドコンテンツの内容も「漆黒のヴィランズ」で何度も繰り返し語られた「託された想い」、「記憶」というテーマ性に統一されており、一体感があり非常に良い。「ヨルハ:ダークアポカリプス」はFFのテーマパークであるFF14に、他のシリーズIP作品を混ぜて大丈夫なのかと考えていた。しかしアンドロイド達の記憶と自我の統一性など親和性が高く、想像以上に馴染んでいた。ただそのテーマ性はレイドイベント自体では主として描かれないため、それをくみ取るためには『NieR:Automata』のプレイは必要だろう。そしてレイドでの演出や楽曲が素晴らしいので、全部のネタを味わいたいならオートマタだけじゃなく、レプリカントとDODにも手を伸ばしてほしい。
「ウェルリト戦役」はFF14としては珍しい毛色の違ったジャンルのコテコテのロボットモノオマージュであった。前述したとおりFF14は悪役であっても、一見して善悪を決めつけず、その背景を慮る「対話」のゲームだと感じているのだが、サイドシナリオとは言えここまで分かりやすい悪役の登場は初ではなかろうか(イルベルドですら凶行に至った背景がある)。ガイウスの補完であり、ロボットモノらしい熱い展開で良かったが、ただ1つの不満はもっとロボット操縦させてほしかった点だ。

「希望の園エデン」は大好きなFF8のオマージュで嬉しかった。ミトロンとアログリフはサイファーとアルティミシア/シドとイデアといった魔女と魔女の騎士であるし、ガイアとリーンはスコールとリノアの関係性の再話だ。「妖精/ジャンクション」の要素の使いかたも上手く、FF8のエッセンスと素晴らしい演出はそのままに、内容を「漆黒のヴィランズ」のテーマに沿って語り直してるのもポイントが高い。
また私は5.0本編をクリアしたのち、早く「暁月のフィナーレ」へ向かいたい気持ちを抑え、用意されているロールクエストを体験するため今までプレイしていたDPSから一旦離れて、暗黒騎士と賢者の育成を行った。特に暗黒騎士はトレーラーでフィーチャーされていることと、ジョブクエストを「漆黒のヴィランズ」のメインシナリオライターである石川夏子さんが担当しており、評判が良いということで始めたが想像以上だった。やるかやらないかで主人公に対する印象がかなり異なるどころか、完全に「漆黒のヴィランズ」のサブテキストなのでほぼ本編である。これを見るために慣れないタンクを頑張って育成してきて良かった思えるシナリオだった。

公式サイトの「漆黒秘話」と「黎明秘話」を読み、「暁月のフィナーレ」へと進む準備は万全だ。「星と命を巡る物語」の最終章を全力で楽しみたいと思う。
2023年1月にプレイしたゲームの振り返り
FF8

年末から正月にかけてFF8をクリアした。クリアまで33時間ほどかかったが非常に良い体験であった。FF8は何回もクリアしているのに何度プレイしても色あせない魅力がある。特にシナリオの出来が非常に白眉であり、ジュブナイルとボーイミーツガールとしての完成度が高い。
スコールをはじめとしたキャラクターの人物描写に強く感情移入させられる。人物描写に一貫性があるため、主人公のスコールだけではなく、たとえばアーヴァインがイデアを暗殺するときに感じていた恐怖や、序盤のセルフィに対する態度などに理由が存在しており仲間やサブキャラクター1人1人に物語がある。本編を追うだけでなく、シナリオをそれぞれのキャラクターの心情に沿って読み解くとより楽しめる、何度噛んでも味がするゲームだ。
また本作の特徴であるジャンクションシステムがバトルだけでなく、記憶障害やラグナ達の道のりの見せ方などシナリオが綿密に絡み合ってるのも隙がない。そしてアルティミシア戦からEyes On Meが流れるエンディングムービーに、FFのメインテーマがかかるカメラ演出のエンドロールは何度見ても手放しで拍手を贈るほど本当に素晴らしい。
FF14
私の1月におけるFF14の歩みはだいぶ早足だった。1月11日に「紅蓮のリベレーター」4.5を終えたかと思いきや、1月23日にその次の拡張パッケージ「漆黒のヴィランズ」の5.0本編をクリアした。5.5をクリアしたら詳しくシナリオについて触れた個別記事をあげるが、評判通り素晴らしい物語で、今までの拡張パッケージと比べても頭一つ抜ける出来である。
また特にゲームとして良かった部分は、「紅蓮のリベレーター」序盤で顕著であった先の見えなさや展開のマンネリ感が完全に改善されており、プレイヤーを飽きさせない構成が見事であった。まず第一世界における罪喰いや世界そのものの成り立ち、暁の仲間を原初世界に帰す方法、水晶公やエメトセルクの正体という大きな謎を最初に提示し、その解決を大目標にかかげる。そしてその道のりの中で訪れる、バリエーション豊かな各エリアで1人ずつ暁の仲間と再会させることで、確かにストーリーが進んでいるとプレイヤーに実感させてモチベーションを牽引させる。
ずっと面白い感覚が持続する素晴らしいゲーム体験で、最高峰のJRPGをプレイさせていただいたと思う。そしてこれからプレイする最新の拡張パッケージ「暁月のフィナーレ」が控えているのは、ここからまだいけるのかと、本当に底知れないゲームだと感じる。
本編後のレイドコンテンツの出来もよい。「ヨルハ:ダークアポカリプス」はFFのテーマパークであるFF14に、同じ会社ではあるがほかのシリーズIP作品を混ぜて大丈夫なのかと考えていた。しかし『NieR:Automata』は、FF14のテーマの1つである「託される想い」との親和性が高く、想像以上に馴染んでおりよかった。
「ウェルリト戦役」はFF14でお出しされるとは思っていなかったジャンルだが、コテコテのロボットモノオマージュで、ロボットモノ好きとしてテンションが上がった。今さらであるが、ロボットが出てくるのはアラグ帝国とガレマール帝国はもはやなんでもアリだなと感じた。作中でオーバーテクノロジーの物を出したいなら、アラグ帝国の遺跡から発掘したことにすればOKですね。
そしてFF14は悪役であっても、一見して善悪を決めつけず、その背景を慮る「対話」のゲームだと感じているのだが、サイドシナリオとは言えここまで分かりやすい悪役の登場は初ではなかろうか。たまにはこういう毛色の話もよい。ただ1つの不満点はもっとロボット操縦させてほしかった。あのシステム流用していっぱいコンテンツ作ってもいいんですよ。
最後に「希望の園エデン」は別に予習のためにFF8を直前にプレイしていた訳ではないが(漆黒と暁月はネタバレを避けているため知らなかった)、完全なるFF8のオマージュシナリオで嬉しい誤算だった。メインシナリオが途中で、再生編がまだ解放されていないが最後の展開が楽しみだ。
Hi-Fi RUSH
1月26日に突如発売された『Hi-Fi Rush』は、配信されるやいなやゲーム好きのなかで話題沸騰、IGN JAPANのレビューでは10点満点(マスターピース)を叩きだした。私は現在序盤~中盤程度までプレイしているがその高い評価は当然と感じる。
本作をプレイして感じるのは、ゲーム体験がとにかく気持ちがよいこと。ゲーム内の全てが音ハメされており、それにオリジナルのサウンドや、上記したアーティストの楽曲に乗せてステージを進めていくため、とにかく触り心地がよい。アクションゲームでありがちなボタン連打が通用せず、その時々でビートを刻んで敵を倒していくのはマンネリ感防止にもなるのも良い点だ。
1月はFF14にかまけており、プレイ本数が少なかった。2月はFF14を進めつつ、『Hi-Fi Rush』の続きと、購入済みの『シーズン 〜未来への手紙〜』、『A Space for the Unbound 心に咲く花』をプレイしたい。
FF14「紅蓮のリベレーター」を終えた感想
以下の感想は『ファイナルファンタジー14』の「紅蓮のリベレーター」パッチ4.5までの内容を含みます。

昨年のゴールデンウィークセールで購入したFF14が、ついにパッチ4.5「英雄への鎮魂歌」を終え、拡張ディスク第三弾「漆黒のヴィランズ」に突入した。「新生エオルゼア」と「蒼天のイシュガルド」はGWに買った勢いのままクリアしたが、「紅蓮のリベレーター」は6月から今の今まで半年程度かかってしまった。それはシンプルに6月頃から実質的なゲームライター活動がスタートしたことによる環境の変化というリアルな事情もあったが、「紅蓮のリベレーター」のストーリーの立ち上がりに、いまいち盛り上がりに欠ける展開が連続したことも考えられる。
ガレマーレ帝国との戦争を扱う上で、帝国の所業や現地の状況を見せる必要があるとは言え、序盤は各地域に行く→帝国への反乱に誘う→一旦拒否される→帝国の横暴シーン→それを解決して協力を取り付けるという流れの繰り返しであり、「飽き」に片足を少し突っ込んでいた。
また「蒼天のイシュガルド」までは主人公として話の中心にいた光の戦士も「紅蓮のリベレーター」ではプレイヤーキャラではあるが、実質的な主人公の座を現地の問題の中心人物である「リセ」、「ヒエン」、「フォルドラ」に明け渡し、主に「英雄」や「暴力装置」としての役割を与えられていた印象だ。特に序盤はストーリーの深刻さや盛り上がりとプレイヤーとの微妙な距離感も少し感じた。ただ中盤でアジムステップに訪れてからは話にメリハリがつき、そしてドマにおけるゼノスとの本格的な邂逅により光の戦士がシナリオでの存在感を取り戻した。そこからはストーリーも一気に加速し素直に面白いと感じられた。
そして「新生エオルゼア」や「蒼天のイシュガルド」でも思ったが、FF14はメインシナリオはもちろんであるが、パッチ〇.1以降の戦後処理パートが面白い。「紅蓮のリベレーター」でもプレイヤーの胸をえぐるような展開があったり、次の拡張である「漆黒のヴィランズ」への多くの伏線が張られたりと濃密な体験が味わえた。また主人公以外を操作するバトルが追加されたのも良かった。今までいくらなんでも光の戦士に任せすぎでは?と思った部分が、他のキャラクターもそれぞれ一生懸命戦っているのだと実感することができたのと、行えるアクション数の違い、パラメータの対比などで光の戦士がいかに戦いに秀で、英雄と呼ばれるべき存在なのか再認識できた。特に最後のインスタンスバトルの演出は非常に熱く、プレイヤーを滾らせた。

このまま「漆黒のヴィランズ」を進めたいところだが、十二分に楽しむために以前買っておいた「Encyclopaedia Eorzea」2冊と、サイドストーリー集「光の回顧録」を読んでからにしたい。どちらも掲載範囲が「紅蓮のリベレーター」までのようなので今読むのが最適だろう。

昨日1月10日に最新パッチである6.3があたったFF14であるが、FF16の発売日や6.4パッチがあると思われる5~6月までには「暁月のフィナーレ」の最新まで追いつき、次からは更新をリアルタイムで楽しめるようにするのが当面の目標だ。
2022年の振り返り
2022年は私の人生にとって大きな転換点となった。春先までは漠然としたゲーム好きという立場であったが、今年の7月よりフリーのゲームライターとして活動している。新たな出会いや新たな挑戦も多く、刺激になりっぱなしの1年であった。
そして月並みな言葉であるが「情熱」、「継続力」、「行動力」の大切さを改めて思い知った。ゲームへの「情熱」がなければこのブログを書こうとは思わなかったし、「継続力」がなければこのブログは三日坊主で終わっていた。そして「行動力」がなければ、ライター募集を見つけても応募しなかっただろう。メディアへの寄稿経験のないまったくの素人の自分がゲームライターになれたのは、このブログが「個人ブログにて定期的なゲームに関する記事掲載」という募集要項を満たしていたからあり、この内の1つでも欠けていたら今の自分はいない。
これから先どうなるのかはわからないが、好きなことを仕事にできている現状は楽しいものではある。来年の抱負は「今後もゲームライターとして生きていけるよう頑張る」ということにしたい。以下は2022年に私が執筆した記事である。良かったら読んでほしい。
『BLACK SHEEP TOWN』体験版プレビュー
『Last Time I Saw You』体験版プレビュー
『終のステラ』体験版プレビュー
『ディオフィールド クロニクル』レビュー
『BLACK SHEEP TOWN』レビュー
「軌跡」シリーズ入門ガイド記事
『彼方へ Far Away』体験版プレビュー
『モノクロームメビウス 刻ノ代贖』体験版プレビュー
『鳥類弁護士の事件簿』レビュー
『十三月のふたり姫』レビュー
2022年個人GOTY
IGN JAPANにて私の2022年個人GOTYが公開されました。
現在フリーライターとして活動しているIGN JAPANにて、2022年にプレイしたゲームの中からトップ10を決める、個人GOTYが公開された。
2022年を振り返る個人GOTY:SIGH ゲームライターデビューと存在感を発揮し続けたアドベンチャーゲームたち https://t.co/7hGhFC3FMK pic.twitter.com/UIBo1H6gZ2
— IGN Japan (@IGNJapan) 2022年12月21日
詳しい記事内容はIGN JAPANのサイトを見てほしいが、ランキングにはこのブログで感想・レビューを書いたゲームが多くランクインしているため、そのページのリンクを置いておく。なぜこの順位にしたのか参考までに見ていただければと思う。
来年もフリーライターとして生きていけるよう精進していきたい。
同人本「GAME GAME MAGAZINE O2 旅人のゲーム」に参加しました
【お知らせ】GAME GAME MAGAZINE O2
— game game (@gamegam58653260) 2022年12月4日
旅人のゲーム公開しました
note→https://t.co/wJZoI0rARP
booth(電子書籍版)※著者の意向により電子書籍版では一部画像は省いております
→https://t.co/XR9HrWtHXS pic.twitter.com/H2bFvBvUag
「GAME GAME MAGAZINE O2 旅人のゲーム」という同人本に参加させていただきました。現時点では製本はせずにデータ販売のみとのことです。電子書籍版は1000円、noteは無料で読めますがnoteへ投げ銭していただけると執筆陣の励みになります。
テーマが「旅人のゲーム」ということで、最近プレイしたゲームのなかでも旅感をひときわ強く感じた『ゼノブレイド3』を題材に、「『ゼノブレイド3』から見るゲームの“旅”感の正体とキリスト教由来のモチーフの融合を探る」という原稿を書いています。『ゼノブレイド3』の第6章までのネタバレを含みますのでネタバレを気にする方はお気をつけください。
このブログで書いた『ゼノブレイド3』のレビューは、シリーズとの比較やゲーム全体の評価という点で書きましたが、同人本の原稿では旅とは何かやキリスト教を交えて文芸的な側面で執筆していますので、良かったらブログのレビューと同人本を合わせてどうぞ。
私以外にも多数のゲームライターやゲーム好きが参加しており、非常に読み応えがありますのでぜひ。気合を入れて書いたのでよろしくお願いします。
パフォーマンスに難はあるが、シナリオは歴代で一番面白い『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』クリアレビュー

『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』は、株式会社ポケモンより2022年11月18日に発売されたNintendo Switch向けタイトルだ。今年の1月28日にもシリーズのスピンオフタイトル『Pokémon LEGENDS アルセウス』が発売されたばかりであるが、本作は2019年11月発売の『ポケットモンスター ソード・シールド』以来となる本編シリーズ、いわゆる第9世代の作品となる。ちなみに私はポケモンはバージョン違いは除きシリーズ全てをクリアしている。
まず言いたいことは『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』はすでに話題になっている通り、ゲームのパフォーマンス面に大きな課題を抱えているが、シナリオとキャラクターと演出は文句なしに過去一で素晴らしい出来であった。
『Pokémon LEGENDS アルセウス』の感想記事

ストーリーは32時間ほどでクリアできた。いつもポケモン本編シリーズは20時間強程度でクリアできていたため、いつも以上に時間がかかっている。これはオープンワールド化したことにより、探索がより濃い体験になったことを数字でも示しているだろう。

ポケモン本編シリーズをプレイするときには、いつも個人的な軽い縛りを設けており、
①旅パは新ポケモンだけで構成する。
②旅パのタイプは被らせない。
③伝説・準伝説は旅パにはいれない(今回ミライドンは外せないため許容する)
ということにしている。新しいシリーズでは新しく幅広いポケモンを使いたいというのが理由だ。また私はポケモンエンジョイ勢であり対戦ガチ勢ではないので、来るであろうDLCまでソフトを寝かせておく予定である。
学園青春モノという軸で展開された濃密なシナリオ
発売前はオープンワールド化したことにより、ストーリー部分が薄くなってしまわないかと心配していたが、実際にプレイしてみて全くの杞憂であることが分かった。まずオープンワールドといいつつ、レベルが変動するわけではなかったり、一部通行禁止エリアがあったりとゲームは半リニアで進行する。そして各地に散りばめたシナリオをアカデミーにまつわる「学園青春モノ」の3つのルートに絞り、大目標を設定することでストーリーが薄くなるのを防止しているのも特徴である。
ライバルのネモに導かれポケモンバトルの頂点を目指す「チャンピオンロード」。ペパーとの秘伝スパイスを巡る冒険のなかで家族関係を見つめ直し、人間とポケモンのありかたを探る「レジェンドルート」。はぐれ者たちとの交流を通して学園の問題を浮き彫りにする「スターダスト★ストリート」とアカデミーを舞台にバリエーションのある物語が繰り広げられ、学園青春モノらしい熱いテーマが描かれていた。そしてバラバラであった3つの冒険が収束し、パルデア地方の謎に迫る物語が展開されるのは面白い。序盤から張られていた伏線も最終的に鮮やかに回収され、ポケモンシリーズでもトップクラスにシナリオの完成度が高かった。特に本作の4人でマルチプレイができるというシステムを活かした、終盤のエリアゼロ探索時に仲間3人がわちゃわちゃ喋りながら冒険をしている様子は、こういうのがやりたかったんだと素直に感動した。今までもメインキャラクターが主人公を入れて4人というのはシリーズでよく見られた構図だが、今回は4人の子どもたちの旅ということで、ポケモンのモチーフの原点である『スタンド・バイ・ミー』に回帰したとも言えるだろう。特に平原を歩く4人とミライドンの姿が映し出されるストーリーのラストシーンは直球のオマージュのように思える。
魅力的で多様なキャラクター
学園が舞台ということでジムリーダーに加え、教師陣も多数存在し従来の作品と比べてもネームドキャラクターの数は多い。しかしポケモンのチュートリアルを兼ねた授業で教師の人柄を知ることができる。ジムリーダーもただ単にジムに行ってバトルに勝つというだけでなく、バトルの前にそれぞれのジムリーダーのパーソナリティーに沿ったジムテストが行われ短い描写であるが、効果的にキャラクターを描いている。四天王やチャンピオンも序盤から頻繁に物語に登場し存在感を放っている。

テンプレの性格付けをされたキャラクターは1人もおらず、ジムリーダーであれば発売前から人気であった動画配信者のナンジャモや、中性的な見た目のグルーシャ。教師陣であればイカツい見た目だが心優しい言語学教師のセイジや、クールなマッド気質の歴史教師レホール。四天王の関西弁の麗人チリはSNSでも非常に人気であり、どのキャラクターも個性的で魅力的だ。
また作中のモチーフの使い方も上手く、例えばスター団幹部のビワは女子プロレスラーの格好をした心優しき少女であるが、その彼女が「ヒールボール」を愛用しているのは、優しい性格とプロレスの悪役であるヒールの2つの意味にかかっている。またスター団を束ねていたマジボスを倒した際に「りゅうせいぐん」のわざマシンがもらえるのは星(スター)だけにニクい演出であった。
オープンワールド化した効果はいかに
本作はシリーズ初のオープンワールド化に乗り出した意欲作である。ゲームにおけるオープンワールドはそもそもそのゲームで何を表現したいかを表す手段であり目的ではない。本作は「探索・育成・対戦」というポケモンの面白さの根本に合わせてチューニングしてあり、例えば本来オープンワールドゲームであってしかるべきフィールドで発生するサブイベントなどはほとんどない。ただ本来サブイベントはキャラクターや世界観の掘り下げや探索のモチベーションを高めるためのものである。その代替として本作ではシナリオ以外にもキャラクターや世界観を掘り下げる手段としてアカデミーの授業や教師陣との交流などを実装している。もし本作にフィールド上で発生するサブイベントが大量にあったとしたら、それは逆に「ポケモン」というゲームの「探索・育成・対戦」という本質をブレさせる結果になっただろう。
そして通常のゲームであれば避けるべき障害としての敵が、「ポケモン」はその長い歴史のIPのなかで報酬兼目的と化しているのも特徴だ。そのため広いフィールドに新しいポケモンや多くのアイテムを置くだけでプレイヤーの寄り道へのモチベーションへと早変わりする。街道沿いに存在するトレーナーもフィールドにおける目的地のようなもので、ポケモンセンターでトレーナーを〇人倒すともらえる報酬もあり、トレーナーがいるから少しあっちに行ってみようという探索のやる気を高めてくれる。ポケモンは広いロケーションにポケモンとアイテムとトレーナーを設置するだけで、自動的に目標が発生しそれだけで楽しいのだ。
ただシナリオがオープンワールドとして有機的に繋がっていたかというとそうではなく、前述したとおり半リニアで進行するため、感覚としては従来シリーズの探索範囲が膨大でシームレスに広がっただけという印象が強い。進行を完全に自由に制御できるオープンワールドを期待していた人は肩透かしだと感じた人もいるだろう。
練り込まれていないシステムはゲーム体験を阻害しかねない
ここまで魅力を書いてきたが、さすがに無視できない問題としてパフォーマンスの低さが挙げられる。本作はオープンワールド化したことの代償としてあまりに低いフレームレートになってしまっている。探索中特にポケモンが密集していたり町中で人が多かったりするエリアでは動作がガクガクになってしまう。フィールドでは遠景が描写できておらず、遠くに見えるアイテムやポケモンが表示されないため、とりあえず適当にフィールドを巡りポケモンがいたりアイテムがあったりしたら回収というサイクルになりがちだ。何回も見るであろうメニュー画面やマップを広げるのも、レスポンスが悪くワンテンポ遅れるような感覚である。またソフトがダウンロード版であれば、データをSDカードではなく本体保存メモリーへ移動すれば、処理落ちはある程度軽減されるため気になる方は試してみてほしい。
BGMなどはさすがポケモンという思えるほどに、世界観にマッチしつつゲームを盛り上げており惚れ惚れした。特にスター団関連は疾走感と焦燥の中に叙情的な展開が見え隠れし、スター団の背景を連想させる楽曲ばかりで、ゲーム中に手を止めて聞き入ってしまったほどにただただ素晴らしいの一言だ。ただ四天王のBGMバグなどのプレイヤーの一度しかない初見体験を損なうような脇の甘さは擁護することはできない。
「ポケモン」が担う教育的意義とは?
私が『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』で一番素晴らしいと考えているのは、制作陣が作ったゲームの向こう側にいるプレイヤーをきちんと見据えていることだ。今回はプレイヤーが学生という立場ということもあり、教えを受けるという場面が多く見られる。「ポケモン」というIPはあまりに対象の層が厚く、私が4歳の誕生日に『ポケットモンスター 赤』とゲームボーイ本体を買い与えられ、初めてゲームという存在に触れ言葉を覚えたように、未就学児から小学生くらいのプレイヤーも多いだろう。そのような子どもたちにどのようなゲーム体験を提供するかが考えられている。
例えばゲームのチュートリアルを兼ねたアカデミーの授業ではポケモンの世界を深掘りするのと同時に、ポケモンの用語を交えたタイム先生の数学などを通して、実際の学校の勉強の端緒となり、幼いプレイヤーが勉強って面白い!と学習意欲を高められる構造になっている。またセイジ先生の言語学は言葉を覚えるのと同時に人との関わり方を伝える内容になっており、ハッサク先生の美術は生きていく上では直接役に立たないかもしれないが、自らが何を「美しい」と考えることは人生を豊かにすると言っている。こうした体験を通してプレイヤーを啓蒙しようという意図が見える。
シナリオのテーマも「友達は大切にしよう」「辛いときは人に頼ろう」「家族とはきちんと話そう」「いじめはよくない」「人を見た目で判断しない」といったありきたりなものであるが、それを最後まで誠実に描ききっており大人がプレイしても全く陳腐ではない。悪人も作中では存在せず、ただただ日常生活で大切な倫理観をプレイヤーと目線を合わせて表現しようとしているのが分かり、非常にメッセージ性が高い。
そして学校教育以外でも本作のフィールドに点在する学生が老若男女幅広く存在していることにはじめ、例えばチリが初めて登場した時も自然にハッサクが「彼女」と説明しただけで性別に驚く描写がない。明確にしなくてよい部分は曖昧にして、どんな姿をしていてもそのまま本人の個性として受け入れられている世界だ。そしてゲームの最初に設定する主人公の外見も(これは以前のシリーズからでもあるが)「あなたのイメージを選んでください」と表示されるのみで性別の強要はしないし、後からメイクや髪型でいくらでも外見をいじれる。
このことは教育の重要性やセクシュアリティや価値観が多様化する現代で、世界中の人間がプレイするであろう「ポケモン」というIPの持つ莫大な影響力を制作陣が自覚し、その上でゲームを通して何をプレイヤーに伝えたいかを精査した結果だと感じる。この姿勢を素直に賞賛したい。
硝煙の匂い漂うトロピカルサグライフシミュレーター『Orangeblood』ネタバレなしレビュー

『Orangeblood』は個人ゲーム開発者Grayfax氏が手がけたJRPG/トロピカルサグライフシミュレーターだ。PC(Steam)版が2020年1月14日に、コンソール版が2020年10月1日に配信開始した。緻密なピクセルアートが特徴的な作品で6時間弱でサクッとクリアできた。世界観・シナリオ・グラフィック・キャラクター・サウンド・雰囲気が素晴らしく、あまりにファッキンクレイジーで倫理観が終わっているストーリーのオチも最高であった。
沖縄近海に浮かぶ人工島「ニュー・コザ」を舞台にしてトラブルバスターのVanillaら4人の少女が巻き起こす騒動と活躍を描いている。199X年、仕事のミスでアメリカの連邦刑務所に収監されていたVanillaは、釈放の条件としてCIAから提示されたニュー・コザの閉鎖区画までの経路を切り開くという依頼を受け、故郷でもあるニュー・コザに向かう。
友人の妹でトラックメイカー兼DJのMachiko a.k.a DJ.AUTOMATICOと、刀使いの快楽殺人鬼で愚連隊霞ヶ浦連合の幹部Yazawa、武術の天才で香港三合会のカンフー使いJackieを仲間に加え、島を巡る陰謀に立ち向かっていく。キャラクターデザインは可愛らしく少女たちの会話劇もゆるい雰囲気なので、一見するときららマンガのような印象を受けるかもしれないがシナリオの実態は血と暴力と薬物が蔓延するバイオレンスなB級映画チックで全く可愛らしくない。

抗争の中で手に入れた工場で「センシティブな小麦粉」を製造し資金繰りをする一方、ニュー・コザに蔓延るヤクザ・マフィア・三合会に喧嘩を売り命を狙われる。Vanillaたちの日常はめちゃくちゃで刺激的かつ魅力的だ。ジャンル名として「トロピカルサグライフシミュレーター」を謳っているように生活感のディティールにもこだわっている。体力を回復するため食堂で食事をするときはボタン1つで完結するのではなく、食券を券売機で買う→食器を受け取る→テーブルで食べる→食器を返却口に返すという作業が必要だ。またシナリオの進行に関係ない部分で、ベンチに座ってタバコを吸ったり、屋上でゴルフができたり、屋台やバーカウンターで酒を飲んだりできる。オブジェクトにも細かく触れられフィールド上のトイレの便座のフタを片っ端から開けて回ることもできる。こうした部分の作り込みはニュー・コザで生きているというリアリティーを演出するのに非常に効果的だ。開発者であるGrayfax氏の全曲監修のもと、PLAYISMが作曲した90年代のHIP-HOPから多大な影響を受けたサウンドトラックも非常に素晴らしい。
ここまで本作の良い点を挙げてきたが、システム面は正直に言って難ありである。私がプレイしたSwitch版だけかもしれないが、ゲーム全体のレスポンスが非常に悪く(これはどうやらバグ取りのアップデート後かららしい)ボタンを押して全ての画面に変移するときにフリーズした?と思うほど3~5秒ほど待たされる。短編RPGだからこそ耐えられたものの、長編だったら投げ出してしまいかねない。
Vanillaたちは銃火器を用いてバトルを行うが、フィールド上に点在する宝箱からランダムに効果が設定された銃や装備品が手に入るハックアンドスラッシュ方式を採用している。武器の種類はアサルトライフル・サブマシンガン・ショットガン・アンチマテリアルライフルがあるが、正直言ってアサルトライフル以外の使い勝手が悪いと感じた。これは後述するYazawaのスキルにも関わるが、Yazawa以外が全体攻撃をする意味があまり感じられない。

序盤でYazawaが加入した後はゲームバランスが崩壊する。Yazawaのスキル「紫電一閃」は超強力な攻撃を敵全体に行うがゲームクリアまで雑魚敵は全て片付いてしまう。そのためサブマシンガンやショットガンで全体攻撃する意味がない。それならば1体に何度も攻撃できるアサルトライフルを選ぶのが吉だ。そしてその後Jackieを仲間に加えたらさらにバランスが壊れる。Jackieは単体攻撃を必ず回避し、強力なカウンターを行うスキル「十歩一殺」と、自分に全て単体攻撃を集中させるスキル「タウント」を持つ。これを同時に発動させればボスが攻撃をするたびに、逆にボスをボコボコにするJackieの姿を見ることができる。
スキルの発動にはSPというゲージが必要だが、フィールド上で敵のシンボルに向かって発砲すれば50%SPを持った状態でバトルに移行できる。ボス戦では開始時のSPは0であるが、戦闘開始時のSPを増やすことのできる装備品もあるので雑魚敵はYazawaボス戦はJackieに任せればまず負けることはないだろう。

しかしシステム面に気になる部分はありつつも、前述した作品の魅力がそれを上回っていた。短編ということもあり不満が表層化する前にクリアできたのも良かったのだろう。私の好みにピッタシハマったゲームだった。