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『災難探偵サイガ~名状できない怪事件~』ネタバレなし感想

『災難探偵サイガ~名状できない怪事件~』はSwitch向けにディッジより2023年3月3日発売された「コミカル災難アドベンチャー」だ。PC(Steam)向けにも発売予定だが現状未定である。シナリオはクトゥルフ神話をベースとした作品を多く手掛ける黒史郎が担当し、キャラクターデザインはおおぐろてんがつとめる。

本作には『災難探偵サイガ 探偵の史上最悪の災難』という、ゲームより時系列が後になる続編小説が存在し、初回限定盤にはそれとサウンドトラックCDが付属する。

ゲーム本編はエピソード1~6まであり2時間強でクリアできる。そしてスタッフロール後に10分程度のエクストラストーリーが2本解放される。そのため多く見積もっても3時間弱程度でゲームはクリアできるだろう。

ゲームをプレイしていて良かった点と気になった点をサクッと挙げていきたい。

 

良かった点

魅力的なキャラクターたちによるドタバタストーリー

さすがシナリオを手掛けたのがプロの作家ということで、話運びのスムーズさとキャラクターを立て方が非常に巧みであった。2~3時間の尺のなかでキャラクターたちの魅力を描き、プレイヤーの作品への没入を促している。

主人公である災難つづきの大不運な探偵「天堂サイガ」をはじめとして、ミステリアスな守銭奴の探偵助手「ヒン・レイ」、サイガのことが大好きで探偵事務所の経理・事務を担当している小学生女子「蝶乃サナギ」、仮面をかぶったオカルトオタク少年「尾田国麿」といった一癖ある人物ばかりだ。そのほかにもギャルの情報屋「ミルぽん」や、ドローン・ジジイこと「DG」や公園に住むホームレスなど舞台である「祭鳴町」への愛着が増すようなキャラクターばかり登場し、バリエーション豊かな登場人物たちは本作の大きな魅力だろう。終盤では今まで出会った人たち全員と協力するような展開もあり、思わず胸が熱くなった。キャラクターボイスはパートボイスであり、日常会話では挨拶程度しか喋らないが、重要な場面ではきちんと全文声優による演技がついているためあまり気にならなかった。

 

ゲームはオーソドックスなアドベンチャーゲームであり、マップ画面で指定の場所を選択して進行していく。シナリオ上あまり関係の無い場所にも行け、キャラクターたちの小話が聞けるのは、登場人物と世界観の掘り下げに役立っていた。ただゲームを進めるなかでフラグが立ち目的地を選択すると問答無用でシナリオが進むので注意が必要。アドベンチャーパートでは時おり選択肢が存在し、そこではセーブができないがどちらの選択肢を選んでも同じ展開だったり、即ゲームオーバーになって直前の選択肢に戻ったりするので、あまりセーブができないことは気にならなかった。

 

開発陣のプレイヤーを楽しませたいという意気込みも伝わるような作品で、ゲームにはアドベンチャーパート以外にも2か所ほどミニゲームパートが存在する。簡単であるためゲームの進行を阻害しないことと、プレイヤーがゲームへ介入できるインタラクティブな要素を入れることで、より飽きずにプレイができる。

方向ボタンを指定の方向に動かすミニゲーム

 

オカルト要素満載な小ネタ

ストーリーはゲームのサブタイトルに「名状できない」と付いているように、クトゥルフ神話がモチーフとなっているが明言自体はされない。馴染みの薄いプレイヤーでも入りやすいだろう。エピソードの最初に主人公の事務所をポイントアンドクリック方式で探索できるが、そこではオカルトを扱ったゲームらしくさまざまな世界中のオカルトについて小ネタがきける。私はこういった小話が大好きなので嬉しい要素であった。

 

気になった点

洗練されていないシステム

公式サイトを見るとディッジは今までゲーム・アニメ・映画等のCG制作や、モバイルアプリ開発を中心に手掛けているようで、コンソール向けのゲームは本作が初のようである。そのためかシステム面で気になる点がいくつかあった。システムコンフィグは言語選択、テキストスピード、各種音量くらいしか変えることができなかった。

ゲーム部分は偉大な先行作品の多いアドベンチャーゲームというジャンルであるおかげか、あまり粗は目立たなかったが、事務所でのポイントアンドクリックパートでは、物品を選択するとその後毎回カーソルが中央に戻るのが不便に思えた(探索するときは近い位置から順序よくクリックしていく人がほとんどだと思うので)。そしてこのパートでは発生条件は不明だが、たまにゲームの処理落ちがかなり酷く、カーソルが動かなくなりまともにゲームをするのが不可能になった。ゲームをリセットしたら直ったが、SNSで検索すると他の人も起きているようで、この現象はどうやら自分の環境だけではないようだ。なにかしらのアップデートを願いたい。また自分はそうとは思わないが3時間弱のプレイで、ダウンロード版が2728円(税込)というのは少々お高いと感じる人もいるだろう。

 

今後ゲームであれ小説であれシリーズが続いていくのであれば、追ってみようかなと思える作品であった。またサイガたちの活躍が見たいので、次は小説版を読もうと思う。