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ソウルハッカーズの続編としては飲み込めないが、1本のJRPGとしては佳作『ソウルハッカーズ2』クリアレビュー(ネタバレなし)

8月25日アトラスの「デビルサマナー」シリーズの新作『ソウルハッカーズ2』が発売された。43時間弱で真エンディングを迎えることができたためレビューを書いていきたいと思う。


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デビルサマナー/ソウルハッカーズとは

本作『ソウルハッカーズ2』を含む一連の「デビルサマナー」シリーズは「真・女神転生」シリーズの派生作品である1995年セガサターンより発売された『真・女神転生デビルサマナー』から始まっている。近未来が舞台で「真・女神転生」シリーズにハードボイルドさをプラスした、いわゆる「探偵」や「退魔師」モノと思っていただければ良い。1997年に『ソウルハッカーズ2』の直接的な前作である『デビルサマナー ソウルハッカーズ』が発売された。その後10年程期間を空けて2006年に『デビルサマナー 葛葉ライドウ 対 超力兵団』、2008年に続編の『デビルサマナー 葛葉ライドウ 対 アバドン王』が発売された。

この度15年の時を超えてシリーズ新作である『ソウルハッカーズ2』発売された。『デビルサマナー ソウルハッカーズ』の数十年後の舞台設定で、シンギュラリティによって出現した電子生命体Aionが膨大な演算によって導き出された世界の破滅の未来を防ぐため「リンゴ」と「フィグ」という人間に似せた分身を産みだして人間社会に送り出すという導入から本作は始まる。

 

良かった点

魅力的なキャラクターの掛け合いと人間らしさとはを軸にしたシナリオ

キャラクター同士の掛け合いは軽妙で楽しく、打算や利害の一致で集まった敵同士の登場人物が徐々に仲間として結束していく。電子生命体Aionが人の姿をとったリンゴのある意味人間としての純朴さに絆され、過去を顧みて自分の信念を再確認するという場面は素直に良いと感じた。

また、Aionの使徒がリンゴとフィグ(イチジク)ということから分かるように、シナリオは創世記の失楽園をモチーフにしている。楽園=Aionから分離し人間のボディを手に入れたリンゴとフィグが人間らしさとはを学習する。その過程で相互理解や反目、相手を思いやるからこそのすれ違いや、人が人を思いやる愛情を見聞きして成長していくという一連のテーマ性自体は面白さを感じた。

 

作品にマッチしたMONACAが手掛けたサウンド


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本作の歌やBGMは現在放映中の連続テレビ小説『ちむどんどん 』をはじめとして、 数々のアニメや、ゲームで言えば「ニーア」シリーズなどで知られるクリエイター集団「MONACA」が手掛けている。そのため非常に楽曲のクオリティは高く、場面やテーマに合ったサウンドがプレイヤーの感情を引き立てている。

 

気になった点

使い回しばかりのダンジョン構成

本作の欠点としてまず挙がるのがダンジョンの使い回しだろう。これは冗談ではないのだが、43時間弱のプレイで出てきたダンジョンの種類が「倉庫」「廃地下鉄路線」「廃ビル」「ソウルマトリクス」「DLCの裏ダンジョン(これも1フロアをコピペしているだけ)」「ラストダンジョン」しかない。「廃地下鉄路線」のダンジョンをクリアしたら次も「廃地下鉄路線」のダンジョンだった時は本当に笑うしかなかった。プレイ時間の大半がダンジョン攻略のRPGジャンルのゲームでダンジョンが単調な使い回しばかりなのは非常に退屈である。目的地がワープポイントが遠かったり、一方向からしか開かない扉や、プレイヤーを迷わせるためだけに設置されたワープポイントが大量にあるのもプレイ時間の水増しにしか思えない。

特に「ソウルマトリクス」は全5層で構成される仲間3人の精神世界のようなダンジョンでストーリーが進むごとに解放されていく。ただのおまけダンジョンのような形ならよいのだがキャラクターの育成や背景の掘り下げ、エンディング分岐に関わるため避けて通ることができない。また特にキャラクターの心象風景が反映されている訳ではなく、3人とも同じ代わり映えのしない電脳空間のダンジョンで飽きてしまう。キャラクターごとに背景を変えるなどのキャラクターの個性を強調させてバリエーションを作って欲しかった。

 

駆け引きや緊張感が薄いバトルシステム

バトルは『ペルソナ5』のUIが下敷きとなっており、各コマンドが各ボタンに配置されている。ターン制バトルであり敵味方が素早さ順に攻撃するのではなく、味方→敵→味方というように交互に行動する。バトルシステムはアトラスが今までにデザインしてきた「プレスターンバトル」、「1More/総攻撃」、「EXTRA TURN」、「セッション」などとは異なる「スタック/サバト」システムが用いられている。

『ソウルハッカーズ2』は今までのシリーズとは違い仲魔をパーティーに加えることが出来ない。その代わりCOMPに装備という形で、バトル中人間キャラクターが装備した悪魔のスキルが使用できる(使用感はペルソナシリーズに近い)。「スタック」は相手の弱点を突くとバトルの場に装備していた仲魔がスタックされ、味方のターンが終わった時点でスタックされていた悪魔が敵全体に一斉攻撃を行う。これを「サバト」といい、スタックされている仲魔の数でサバトの威力も変わってくる。

ただこのサバトシステムは今までのプレスターンバトルなどと異なり、プレイヤーだけに用意されているシステムである。そのためいくら攻撃を相手に吸収・回避されようが、こちらが弱点を突かれようがこちらのターンが強制終了したり相手の行動回数が増えたりすることはないし、相手がサバトで一斉攻撃してくることもないプレイヤー側にとって完全有利のシステムだ。そのためバトルの駆け引きや緊張感が薄く、バフデバフをしっかりかけて相手の弱点属性を連打していればボスであっても負けることはほとんどないだろう。

 

キャラクターの掘り下げが不十分

良かった点でキャラクターの掛け合いを挙げている以上矛盾していると思う人もいるだろうがそうではない。ストーリーは「コヴェナント」を追うという大目標がある以上シナリオ上でのキャラクターの掘り下げが不十分なのは仕方ないが、前述したキャラクターの過去がビジョンクエストという形で描かれるソウルマトリクスでも掘り下げが断片的で深いところまでは見ることができない。

その他でも酒場で描かれるパーソナルイベント、サブクエストやセーフハウスで食べる食品による細かい差分などではキャラクターの性格・好みばかり掘り下げられており、細かい描写を重ねてキャラクターを形作ろうとしているのは分かるが、キャラクターの背景や骨子がスカスカな印象だ。登場人物が大人ばかりのためワザと腹割って話すことはあまりせず表面上な交流ばかり描くという意図や、相互理解の難しさという演出だったら申し訳ない。

そのためキャラクター周りの十分な掘り下げがなされないまま、対立や和解のシーンが描かれてもプレイヤーとしてはいまいちノリきれなかった。そしてキャラクター同士の深い交流もあまり描かれていないため、終盤あるキャラクターがあるキャラクターに思い詰めてとんでもないことをするシーンがあるが、プレイヤー視点だとたった数回会っただけの人物に対して何でそこまでできるの?と思ってしまった。

 

違和感を覚えるシステムデザイン

本作のシステム周りは違和感を覚えることが多かった。まずロード時間についてデフォルトだと長く感じる人も多いだろうが、それはそのはずでロード画面で表示されるTIPSを見せるためだけにロード時間を長くしてある。そのためオプションからTIPSを表示しない設定を絶対にした方が良い。

全体マップからショップを選んでも街マップの店の前にワープするだけで結局自分で入らなければならないことや、街の探索中にうっかり全体マップを開いてしまうとキャンセルができずもう1回街のワープポイントを選択しなければならないことも不便だ。

デフォルトの移動が遅いためダンジョン内をダッシュするために、仲間のミレディが持つ固有スキルを消費しなければならず、さらに継続時間が非常に短くため多用することになりミレディのMPが枯渇しがちになってしまう。

ソウルマトリクスの開放に必要なソウルレベルが上昇する選択肢が出現する際にテキストが停止しないため、選択肢が来ることを知らずいつも通りテキストを送っていると勝手に選択肢を選んでしまうことも多かった。選択肢を選ぶ時は一呼吸置かせてほしい。

ダンジョン攻略中は画面右上に、フィグが操作するフクロウの形のドローン「ミミ」で敵が近くにいるかどうかのシンボルエンカウントの危険度が緑・黄色・赤の3段階で示される。しかしランダムエンカウントならともかくシンボルエンカウンドならプレイヤーが敵出現時の音や目視で敵の存在は気付ける。ペルソナ3~5のようにバトル中の支援や実況があるなら分かるが戦闘中には出てこない。特別必要でない探索時の危険度を示すだけのナビシステムに果たして存在意味はあるのかと思った。ペルソナっぽさを出すためにナビシステムを実装したかったが、戦闘中の膨大な差分セリフは予算が足りなかったのだろうかなどと邪推してしまう。

極論ソウルハッカーズの続編でなくとも成立するシナリオ

そもそも本作のシナリオには「デビルサマナー」シリーズひいては「真・女神転生」シリーズに必要不可欠な神話や宗教観の要素が存在しない。シリーズ恒例の悪魔会話もバトル中に行うことができず、ダンジョン探索中に仲魔がスカウトする形であり、悪魔会話で悪魔に振り回されるのも一種の楽しみだったが、本作は○○ちょうだいと言われ了承すると一発で仲魔になってくれる。仲魔も一緒に戦いに参加するわけではなく武器に装備するというシステムで存在感が非常に薄くシリーズのフォーマットを借り受けているだけという印象が拭えない。極論悪魔が関係ない超能力や異能などの設定でも物語は違和感なく成立するだろう。

しかし今までの「デビルサマナー」シリーズで登場した組織「超國家機関ヤタガラス」「ファントムソサエティ」などもシナリオに関わることから今までのシリーズの主要素が消えているにも関わらず「デビルサマナー」シリーズの続編として考えねばならず、その部分が上手く混じりあっていない事からファン感情を逆なでしている。これならシリーズのナンバリングではなく全く新しいIPとしてリリースしていたらここまで賛否は分かれなかったと思うし、ゲームの出来自体ももっと研ぎ澄まされていたらペルソナ2からペルソナ3への変遷のように「デビルサマナー」らしくはないが、本作も新しい路線として受け入れやすかっただろう。

 

まとめ

色々と書いたが「デビルサマナー」シリーズの新作としてリリースされた本作は、数々の不満点を抱えながら目立ったバグもなく、コンパクトな1本のJRPGとしては成立しており十分に楽しく遊ぶことが可能である。そもそも本作は3Dモデル・ダンジョン・オブジェクトの使い回しが多いことから考えても非常に低予算だと思うので、破綻せずにここまで形にしたなと思う部分もある。確かに今までのアトラスゲーと比べると、シナリオの深みやゲーム部分の快適さが一段階落ちるとは言え、決して無条件で叩かれてよい作品ではないと考える。私はアトラスのファンとして必要以上に粗が目立ってしまった部分が大きく、普通に楽しめる人も多いだろう。