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ゲームボーイアドバンス時代をリスペクトした、ドット絵で描かれる愛と青春のジュブナイルRPG『Ikenfell』クリアレビュー(ネタバレなし)


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ニンテンドースイッチでプレイしていたRPG『Ikenfell』をクリアした。エピローグまでプレイして17時間弱程度だった。非常に良いゲームであり多くの人にプレイしてほしいため、ネタバレは控えてレビューを書いていく。

概要

『Ikenfell』は海外でPC版が2020年にリリースされ、日本語版とコンソール版が2021年12月9日に発売された、カナダ・バンクーバーの「Happy Ray Games」が開発し「Humble Games」が販売をしているタクティカルマジックRPGである。特徴的な2Dドットグラフィックからも分かるように、ゲームボーイアドバンス時代のソフトにリスペクトを捧げたゲームだ。ローカライズは『UNDERTALE』や『HADES』などを手掛け質の高さに定評のある「ハチノヨン」のため、まるで日本のインディーゲームかと思うほど日本語として違和感はない。

 

シナリオ・世界観

魔法の使えない「マホウレス」である主人公のマリットは、魔法の才能に溢れ「魔法学院アイケンフェル」に入学していた姉サフィーナと連絡が取れなくなったことからアイケンフェルに訪れる。その途中突然炎の魔法が使えるようになり、その能力を使いサフィーナの友人や生徒とともに姉を探していくうちに、アイケンフェルに伝わる謎に向き合っていくこととなるというあらすじだ

ジュブナイルとしてのシナリオの完成度は高く、魔法が使えずに劣等感を抱いていたマリットの成長をはじめとして、友人との関係に悩んでいたりトラウマを抱えていたりするキャラクター達が仲間達と過ごし、冒険を進めるにつれ徐々に理解しあい支えあうという関係性に変化していく。

本作の特徴はLGBTQなどに関する描写だろう。マリットをはじめとして同性への愛を表現するキャラクターが多く登場する。しかしそれに対する葛藤や苦難がシナリオ上では一切存在せずジュブナイル方面に振り切っており、わざわざ触れずとも異性を愛する人もいれば当然同性を愛する人もいる。そういった関係が存在するのは当たり前であるという価値観の描き方は公平で清々しい。

またシナリオだけでなくキャラクターの代名詞でも、ノンバイナリーのキャラクターを呼ぶ時は”彼(he)”でも”彼女(she)”でもなく”彼人(ze)”という表現であり、この細やかな製作陣の心遣いを彼人と訳した「ハチノヨン」のローカライズの丁寧さも光る。

 

そうした配慮はシステム面でも発揮され、ゲーム中のフラッシュ演出の効果を和らげる「光過敏症対応モード」や、キャラクター達のトラウマが明かされたり残酷な展開になったりする前には警告が表示されるモードもオプションで調整できる。

 

バトルシステム

戦闘システムはタクティカルというように、ダンジョンでシンボル敵にエンカウントすると、例えば「空/零・碧の頃の軌跡シリーズ」のように小規模なマス目で仕切られたSRPGのような戦闘に移行する。本作の戦闘システムの特徴として『スーパーマリオRPG』や『マリオストーリー』などのようにアクションコマンドが存在し、相手を攻撃する際や、攻撃を受ける際に適切なタイミングでボタンを押すとダメージが増したり、受けるダメージを軽減できる。タイミングの判定は「OOPS」「NICE」「GREAT」の三段階存在し、OOPSが全然タイミングが違う時、NICEが少しズレたけど大体合ってる時、GREATが適切なタイミングでボタンを押せたという判定だ。

本作はポップなグラフィックとは裏腹に難易度が比較的高く、雑魚敵でも気を抜けばピンチになり、ボス戦となると1~2回の形態変化で死闘になること請け合いである。前述したアクションコマンドのおかげでプレイヤー自身の上達を直接実感できる。敵の使い回しがほとんど無いため、各ダンジョンでモーションや攻撃タイミングが異なる敵が登場してそれに徐々に対処できるようになっていったり、MPなどの概念もなく燃費を気にせず好きなスキルを使えるため、その場に適したスキルを使ってバトルを切り抜けたりという戦闘面の面白さがある。

 

ただ反射神経が悪くて自信が無いという人にも安心で、オプションで最低の判定がOOPSではなくNICEになる「SEMI-AUTO」、自動でGREATを出してくれる「AUTO」に調節できたり、そもそもバトルが始まると即勝利になる「ヴィクトリーコマンドモード」が存在する。本作はストーリー主体のゲームであり、どうしても戦闘で詰まるという人は設定を変えてもゲーム体験自体はあまり変わらないと感じるため変更しても良いと思う。

 

もし興味を持った方はニンテンドースイッチ以外にもPS/Xbox/Steam等でも配信されている。都合の良いハードでプレイしてみてほしい。

 

Ikenfell ダウンロード版 | My Nintendo Store(マイニンテンドーストア)

Ikenfell (playstation.com)

Ikenfell を購入 | Xbox

Steam:Ikenfell (steampowered.com)